【第50回】2018年8月試験

【第50回】学科専門・問題5(2018年8月試験)

 気象庁が明後⽇までの天気予報に使⽤している全球モデルについて説明した次の⽂(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から⼀つ選べ。

  1. (a) 全球モデルでは,静⼒学平衡を仮定した近似を使っている。

  2. (b) 全球モデルの⽔平格⼦間隔は約20km であり,それより⼩さなスケールの現象である積雲や乱流等の効果は考慮されていない。

  3. (c) 全球モデルの予測値は,メソモデルによる予測やその初期値を作るための客観解析における境界条件としても⽤いられる。そのため,全球モデルが改良されその予測特性が変化すると,メソモデルの予測特性も変化することがある。

(a) (b) (c)
答え
② 正 誤 正
解説 (a)について
「全球モデルでは,静⼒学平衡を仮定した近似を使っている。」

これはです。

静⼒学平衡とは「重力による下向きの力と鉛直方向の圧力傾度が釣り合っている状態」のことです。

低気圧や寒波のように水平スケールの大きい現象では、鉛直方向の時間変化があまり大きくありません。

そのため、計算量が少なくするために、

0 = 鉛直の気圧傾度力 + 重力

という静力学平衡の式が用いられています。

全球モデル(GSM)は大規模な気象現象を対象とした予測モデルなので、静⼒学平衡を仮定した近似を使っています。

解説 (b)について
「全球モデルの⽔平格⼦間隔は約20km であり,それより⼩さなスケールの現象である積雲や乱流等の効果は考慮されていない。」

これはです。

全球モデル(GSM)では、⼩さなスケールの現象である積雲や乱流等の効果も「パラメタリゼーション」を用いて考慮しています。

全球モデルの⽔平格⼦間隔は約20kmですが、実際の雲の大きさは20kmよりも小さいものがたくさんあります。

1つの格子内の一部で起きている現象(積雲対流過程など)を近似的に数値予報モデルに取り込む方法を「パラメタリゼーション」といいます。

全球モデルでも「パラメタリゼーション」は取り入られていて、⼩さなスケールの現象である積雲や乱流等の効果も考慮しています。

解説 (c)について
「全球モデルの予測値は,メソモデルによる予測やその初期値を作るための客観解析における境界条件としても⽤いられる。そのため,全球モデルが改良されその予測特性が変化すると,メソモデルの予測特性も変化することがある。」

これはです。

全球モデル(GSM)は、地球全体を対象とした数値予報モデルです。

メソモデル(MSM)は、日本や周りの海を対象とした数値予報モデルです。

メソモデルは対象領域の境界があるので、境界での大気がどうなっているのか、情報が必要になります。

境界の情報を得るためには、メソモデルより広い範囲を対象とする予報モデルのデータを活用すればよく、全球モデルからメソモデルにデータを渡しています。

全球モデルの予測値がメソモデルに使われているので、全球モデルが改良されるとメソモデルも影響を受けます。

■参考
積雲対流パラメタリゼーションの概要(気象庁)
第4章 数値予報モデル(気象庁
気象庁の新しい高解像度全球数値予報モデルについて,北川裕人(日本気象学会、天気論文)
基礎編-全球モデル-(気象庁

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