【第52回】学科専門・問題5(2019年8月試験)

 気象庁の数値予報モデルの特性について述べた次の⽂(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から⼀つ選べ。

(a) 全球モデルとメソモデルの降⽔予測結果が異なるとき,その要因は,⽔平格⼦間隔の違いによる地形性降⽔の違いや,データ同化に⽤いられる観測データの違いによるものであり,積雲対流過程などの物理過程の違いが要因となる割合は⾮常に⼩さい。

(b) メソモデルでは,領域外の情報を得るために全球モデルの予測結果を使っているため,全球モデルに予測誤差がある場合,メソモデルの予測はその誤差の影響を受ける。

(c) 全球モデルでは静⼒学平衡の近似を⽤いていることから,鉛直p速度は⽔平⽅向の運動⽅程式と連続の式を⽤いて求めている。

  (a) (b)  (c)
① 正 正 誤
② 正 誤 正
③ 誤 正 正
④ 誤 誤 正
⑤ 誤 誤 誤

答え
③ 誤 正 正
解説 (a)について
「全球モデルとメソモデルの降⽔予測結果が異なるとき,(中略),積雲対流過程などの物理過程の違いが要因となる割合は⾮常に⼩さい。」
 
これはです。全球モデルとメソモデルの結果が異なるとき、その要因として積雲対流過程などの物理過程の違いは大きいです。というのも、全球モデルとメソモデルでは積雲対流過程などの物理過程の取り扱い方が違うからです。
 
全球モデルの格子間隔は20km、メソモデルの格子間隔は5kmです。実際の雲の大きさは20kmや5kmよりも小さいものがたくさんあります。1格子の一部で起きている現象(積雲対流過程など)を近似的に数値予報モデルに取り込む方法を「パラメタリゼーション」といいます。
 
この「パラメタリゼーション」の方法は全球モデルとメソモデルで異なります。
全球モデルのパラメタリゼーションは「荒川シューバートスキーム」です。
メソモデルのパラメタリゼーションは「ケインフリッチスキーム」です。
 
「荒川シューバートスキーム」では複数の積雲を個別に扱っています。
「ケインフリッチスキーム」では格子内の積雲の効果を、ひとつの積雲で代表させています。
解説 (b)について
「(中略)全球モデルに予測誤差がある場合,メソモデルの予測はその誤差の影響を受ける。」
 
これはです。全球モデル(GSM)は名前の通り地球全部を対象領域とした計算モデルですが、メソモデル(MSM)や局地モデル(LFM)といった領域モデルは日本付近を対象領域とした計算モデルです。
 
領域モデルでは計算範囲の周りに「緩和領域」を設定していて、外側モデルの値に徐々に近づけるようにして、モデル間のギャップを小さくしています。ちなみにMSMだったらGSM、LFMだったらMSMが外側モデルです。よって全球モデルに予報誤差があると、メソモデルの予測はその誤差の影響を受けてしまします。
解説 (c)について
「全球モデルでは静⼒学平衡の近似を⽤いていることから,鉛直p速度は⽔平⽅向の運動⽅程式と連続の式を⽤いて求めている。」
 
これはです。全球モデルで鉛直p速度を求めるときは、連続の式(=質量保存の式)と使います。
 
全球モデルでは地球全部を計算領域としているので、水平方向の変化が大きいです。水平方向の変化と比べると鉛直方向の変化は小さいので、静⼒学平衡の近似を⽤いることで、鉛直方向の現象をほぼ無視しています。そのため鉛直p速度を求めるとき、水平方向の風の計算結果と質量保存の式(「密度の移流」と「 収束・発散による密度変化」の式)を使います。

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