【第54回】2020年8月試験

【第54回】学科専門・問題12(2020年8月試験)

 日本付近の集中蒙雨について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。

  1. (a) 集中豪雨は,狭い地域に短時間に大量の雨が降る現象であり,その水平スケールは数kmから10km程度である。

  2. (b) 集中豪雨時の大気下層では,下層ジェットと呼ばれる強風が観測されることがある。

  3. (c) 集中豪雨時には,下層への暖湿気塊の流入により,下層から中層に及ぶ厚い層で,絶対不安定な成層状態が長時間維持される。

  4. (d) 集中豪雨は,ほとんどの場合,スーパーセルと呼ばれる1つの巨大な積乱雲が発生し,停滞することによって起こっている。

(a) (b) (c) (d)
答え
④ 誤 正 誤 誤
解説 (a)について

「集中豪雨は,狭い地域に短時間に大量の雨が降る現象であり,その水平スケールは数kmから10km程度である。」

これはです。

集中豪雨の水平スケールは数kmから10km程度ではなく、「数十km」です。

気象庁

解説 (b)について

「集中豪雨時の大気下層では,下層ジェットと呼ばれる強風が観測されることがある。」

これはです。

集中豪雨は、活発な停滞前線に伴って発生する場合があります。

前線に伴う集中豪雨域の近くでは、大気下層で局地的な強風帯が形成されることがあります。

これが「下層ジェット」です。

例として、島根県の事例を見ていきます。

島根県で大雨が発生するとき、大気下層では、日本の南海上にある太平洋高気圧の縁辺を回って、高相当温位の空気が流れ込みます。

このとき、「九州の西側の海上」から「山陰沿岸」にかけて、下層ジェットが明瞭にあらわれるのが特徴です。

そして下層ジェットのやや北側に、強雨域が位置します。

解説 (c)について

「集中豪雨時には,下層への暖湿気塊の流入により,下層から中層に及ぶ厚い層で,絶対不安定な成層状態が長時間維持される。」

これはです。

「絶対不安定な成層状態」になると、すぐに対流が発生して、不安定は解消します。

そのため「長時間維持される」ことはありません。

解説 (d)について

「集中豪雨は,ほとんどの場合,スーパーセルと呼ばれる1つの巨大な積乱雲が発生し,停滞することによって起こっている。」

これはです。

集中豪雨は、積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返すことで発生します。

例として、2014年8月に広島で起きた集中豪雨を見てみましょう。

 

「1つの巨大な積乱雲」ではなく、複数の積乱雲によって豪雨になったことがわかります。

ちなみに、「集中豪雨事例の約2/3が線状降水帯によるもの」という研究もあるくらい、集中豪雨は線状降水帯によって発生することが多いです。

■参考
線状降水帯と集中豪雨について(加藤輝之,気象庁気象大学校)
集中豪雨について(二宮洸三,日本気象学会)

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