【第54回】2020年8月試験

【第54回】学科専門・問題5(2020年8月試験)

 アンサンブル予報について述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし,アンサンブル予報は同一の数値予報モデルを用いているものとする。

  1. (a) 初期値に含まれる誤差によって生じる予測の不確実性の情報を得るため,アンサンブル予報では,摂動を加えた少しずつ異なる多数の初期値について,予測を行っている

  2. (b) 予報結果のアンサンブル平均をとることで,数値予報モデルが持つ系統的な誤差を除去することができる

  3. (c) アンサンブル予報のスプレッドが大きい場合は,小さい場合に比べて予報の信頼度が高い

  4. (d) アンサンブル予報などによる確率予報の評価指標の1つであるブライアスコアは, 現象の気候学的出現率の影響を受けるため,出現率の異なる現象に対する確率予報の精度の比較には適さない

(a) (b) (c) (d)
答え
③ 正 誤 誤 正
解説 (a)について
「初期値に含まれる誤差によって生じる予測の不確実性の情報を得るため,アンサンブル予報では,摂動を加えた少しずつ異なる多数の初期値について,予測を行っている。」

これはです。問題文の通りです。

解説 (b)について
「予報結果のアンサンブル平均をとることで,数値予報モデルが持つ系統的な誤差を除去することができる。」

これはです。

数値予報モデルが持つ系統的な誤差を除去できるのは、「アンサンブル平均をとること」ではなく、「ガイダンス」です。

アンサンブル平均をとるのは、「可能性の高い予測」を知りたい場合です。
(ただし各メンバーの分布によっては、アンサンブル平均をとっても「可能性の高い予測」はわかりません。)

解説 (c)について
「アンサンブル予報のスプレッドが大きい場合は,小さい場合に比べて予報の信頼度が高い。」

これはです。

アンサンブル予報のスプレッドが大きいと、予報の信頼度は低いです。

スプレッドとは、アンサンブル予報の各メンバーのバラつき具合を表す量です。

「スプレッドが大きい」=「各メンバーのバラつき具合が大きい」ので、不確実性が高くなり、予報の信頼度は低くなります。

解説 (d)について
「アンサンブル予報などによる確率予報の評価指標の1つであるブライアスコアは, 現象の気候学的出現率の影響を受けるため,出現率の異なる現象に対する確率予報の精度の比較には適さない。」

これはです。まずはブライアスコアについて見ていきます。

ブライアスコア

ブライアスコアは確率予報の精度を検証する手法です。以下のように求められます。

・降水確率が高くて降水が有った場合、{(降水の有無)ー(予測された確率)}の値が小さくなります。(上図の例の4回目より1回目のほうが値が小さい)

・降水確率が低くて降水が無かった場合、{(降水の有無)ー(予測された確率)}の値が小さくなります。(上図の例の2回目より3回目のほうが値が小さい)

よってブライアスコアは、値が小さいほうが精度が良いです。

今回の問題について

今回の問題では、「ブライアスコアは、気候学的出現率の異なる現象では、精度の比較に適さない。」が正か誤か問われています。

「気候学的出現率」とは、「晴れの日が多い」「雪が降りやすい」「降水量が多い」というように、その現象が元々起こりやすいかどうかを表す数字です。

極端に考えると、砂漠地帯では雨の降る日が少ないため、「降水確率0%」と言い続ければ予報は当たりやすくなります。

この場合、ブライアスコアは0に近い値となって、「予報の精度が非常に良い」と判断されてしまいます。

一方、「雨が降る日もあれば降らない日も多い」といった地域では、砂漠地帯より予報が難しく、ブライアスコアは砂漠地帯より高い値になります。

このとき、「砂漠地帯」と「雨が降ったり降らなかったりする地域」の予報精度は、ブライアスコアでは正しく比較できません。

よって、「ブライアスコアは、気候学的出現率の異なる現象では、精度の比較に適さない。」はです。

■参考
アンサンブル予報(気象庁)
付録B 数値予報研修テキストで用いた表記と統計的な指標1(気象庁)

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