【第51回】2019年1月試験

【第51回】学科専門・問題2(2019年1月試験)

 気象レーダーに関して述べた次の⽂(a)〜(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から⼀つ選べ。

  1. (a) ⾬粒の体積が1/2になると,⾬粒から散乱される電波の強さは1/4になること等のため,霧⾬が降っていても気象庁のレーダーでエコーが観測されないことがある

  2. (b) XバンドはCバンドより周波数が⾼いため,降⽔のある領域を電波が通過すると,XバンドのレーダーのほうがCバンドのレーダーよりも電波の減衰が⼤きくなる

  3. (c) 気象庁のドップラーレーダーは,降⽔域における⾵の分布を測定することができるので,⻯巻を直接検出する機器として使われている

  4. (d) ⼆重偏波(MP)レーダーは,⽔平⽅向と垂直⽅向の⼆種類の偏波を使⽤して,レーダービーム内の⾬滴の,平均的な縦横の⼨法の差を測定することで,降⾬強度を推定している

(a) (b) (c) (d)
答え
② 正 正 誤 正
解説 (a)について
「⾬粒の体積が1/2になると,⾬粒から散乱される電波の強さは1/4になること等のため,霧⾬が降っていても気象庁のレーダーでエコーが観測されないことがある。」

これはです。

気象レーダーの特性上、霧雨は小さすぎてエコーが観測されないことがあります。

解説 (b)について
「XバンドはCバンドより周波数が⾼いため,降⽔のある領域を電波が通過すると,XバンドのレーダーのほうがCバンドのレーダーよりも電波の減衰が⼤きくなる。」

これはです。

気象レーダーには主に「Xバンド」と「Cバンド」があります。

  • Xバンド:局所的な細かい観測が可能(ゲリラ豪雨とか)
  • Cバンド:広い範囲の観測が可能

Xバンドは電波の減衰が大きいため、近い所までしか観測できません。その分、1分間隔&250m四方の領域で観測できます。

Cバンドは電波の減衰が小さいため、遠い所まで観測ができます。しかし、5分間隔&1km四方の領域の観測になります。
そのためXバンドよりもざっくりとした観測になります。

ちなみに周波数とは”波の数”のことで、Xバンドは9.7GHz、Cバンドは5GHzです。

Xバンドは細かい波なので近くまでしか届かない、Cバンドのほうがゆったりとした波なので遠くまで届く、といったイメージでしょうか。

気象レーダーの役割について、詳しいことはこちらの資料(「気象観測における気象レーダーの役割」ウェザーニューズ)がわかりやすいと思います。

解説 (c)について
「気象庁のドップラーレーダーは,降⽔域における⾵の分布を測定することができるので,⻯巻を直接検出する機器として使われている。」

これはです。

竜巻は直径が100メートル程度しかなく、気象ドップラーレーダーで観測されるドップラー速度の解像度では検出できません

竜巻の原因となっている積乱雲は10キロメートルくらい、積乱雲の中にあるメソサイクロン(小さい低気圧)は数キロメートルの大きさがあるので、これらは気象ドップラーレーダーで観測できます。

解説 (d)について
「⼆重偏波(MP)レーダーは,⽔平⽅向と垂直⽅向の⼆種類の偏波を使⽤して,レーダービーム内の⾬滴の,平均的な縦横の⼨法の差を測定することで,降⾬強度を推定している。」

これはです。

MPレーダー(マルチパラメータレーダー)は、水平と鉛直の2種類の電波を同時に送受信できるレーダーです。

また、雨粒はおまんじゅうのような形をしていますが、雨粒が大きくなればなるほど縦幅より横幅が大きくなります。この雨粒の寸法差をMPレーダーで観測することで、降雨強度を推定しています。

ちなみに以前はXバンドでMPレーダーを利用していたため「XRAIN(エックスレイン)」と呼ばれていました。今はCバンドでもMPレーダーを利用しています。

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