【第51回】2019年1月試験

【第51回】学科一般・問題8(2019年1月試験)

 傾圧大気について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から一つ選べ。

  1. (a) 中高緯度の傾圧大気では,鉛直方向に地衡風のシアーが存在する。

  2. (b) 中緯度の傾圧性が大きい大気中で最も速く発達する傾圧不安定波の東西方向の波長は,数百km程度である。

  3. (c) 傾圧大気で傾圧性が大きくなると,有効位置エネルギーが増大する。

(a) (b) (c)
答え
② 正 誤 正
解説 (a)について
「中高緯度の傾圧大気では,鉛直方向に地衡風のシアーが存在する。」

これはです。傾圧大気と地衡風の説明から解説していきます。

傾圧大気

傾圧大気とは「等温面と等圧面が交わる大気」です。

地球の気温の断面図を見ると、気温の南北経度は中緯度で大きく、高緯度でちょっと大きく、低緯度で小さいです。

等温線と等圧面を合わせて模式的に描くと、以下のようになります。

交わる角度は違いますが、高緯度、中緯度、低緯度ともに等圧面と交わります。(上図では低緯度の等温線と等圧線がほぼ平行に見えますが、、、実際は交わります。)

このように等温面と等圧面が交わる大気を「傾圧大気」と呼んでいて、基本的に地球大気はすべて傾圧大気です。

地衡風

地衡風とは、気圧傾度力コリオリ力の影響を加味した風です。

  • 気圧傾度力=高気圧から低気圧に向かって働く力
  • コリオリ力=地球の自転によって働く力

気圧傾度力コリオリ力がバランスして吹く風が地衡風です。

最後に「傾圧大気では鉛直方向に地衡風のシアーが存在する」について解説します。

ポイントは地衡風のところで出てきた気圧傾度力です。第51回学科一般の問1で示したように、上層ほど気圧傾度力は大きくなります。

気圧傾度力が大きくなると地衡風が大きくなるので、上層ほど地衡風が大きくなることがわかります。

よって鉛直方向に地衡風のシアー(=風速の差)が存在します。

解説 (b)について
「中緯度の傾圧性が大きい大気中で最も速く発達する傾圧不安定波の東西方向の波長は,数百km程度である。」

これはです。数百km程度ではなく、数千km程度です。

解説 (c)について
「傾圧大気で傾圧性が大きくなると,有効位置エネルギーが増大する。」

これはです。

「傾圧性が大きくなる」=「傾圧大気で、等圧面と等温面の交わる角度が急になる」=「南北の気温差が大きくなる」です。

南北の気温差が大きいと、寒気(重い空気)は下に潜り込み、暖気(軽い空気)は上に乗り上げるように動きます。

有効位置エネルギーとは、すべての位置エネルギーのうち、水平方向の位置エネルギーを引いた分です。

有効位置エネルギーは運動エネルギーに転換されます

例えば上図の場合、「左に寒気、右に暖気」のときは、重心が中心付近にあります。

時間が経って「下に寒気、上に暖気」になったときは、冷たくて重い空気が下にあることで安定するので、重心は中心付近より下に移動します。

下に移動した分のエネルギーが「有効位置エネルギー」です。

「有効位置エネルギー」=「転換された運動エネルギー」と考えると、「転換された運動エネルギー」は増大するので、「傾圧大気で傾圧性が大きくなると,有効位置エネルギーが増大する。」はになります。

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