【第51回】2019年1月試験

【第51回】実技1・問1(1)(2019年1月試験)

XX年8⽉31⽇から9⽉1⽇にかけての⽇本付近における気象の解析と予想に関する以下の問いに答えよ。予想図の初期時刻は,図11(左上,右上)は XX年8⽉31⽇18時(09UTC),図11(左下)は8⽉31⽇15時(06UTC),図12は9月1⽇0時(8⽉31⽇15UTC),その他はいずれも8⽉31⽇9時(00UTC)である。

問1.図1〜図5は31⽇9時の実況資料である。これらを⽤いて以下の問いに答えよ。

(1) ⽇本付近の気象概況について述べた次の⽂章の空欄(①)〜(⑪)に⼊る適切な語句または数値を答えよ。ただし,①⑨は⼗種雲形,④は移動に関する語句,⑦⑩⑪は8⽅位で答え,⑤は下の枠内から適切な語句を⼀つ答えよ。

 地上天気図によると,東シナ海に中⼼気圧1008hPa の低気圧があり,そこから華南および⽇本の東にかけて停滞前線がのびている。この前線に近い⿅児島の地上観測によると,全天が(①)に覆われしゅう⾬となっており,前(②)時間内に(③)があった。また,⼩笠原諸島付近には太平洋⾼気圧があり,(④)している。
 
 気象衛星⽔蒸気画像では,朝鮮半島の南部にやや暗い部分が⾒え,その領域では,対流圏(⑤)で⽔蒸気が(⑥)いことが推定される。また,東シナ海には,台湾の北と地上低気圧の東側に⽩く輝く雲域がある。可視画像では,これらの雲域の(⑦)側に,太陽光による影が⾒られ,雲頂の(⑧)い(⑨)であることがわかる。
 
 停滞前線に近い東シナ海は,850hPa天気図では低圧部となっており,500hPa天気図では⼤陸にあるトラフの(⑩)側でかつ太平洋⾼気圧の(⑪)側に位置しており,降⽔の発⽣しやすい気圧配置となっている。
 
⑤ 下層  中・上層  上層
図1
図2
図3
図4
答え
① 積雲 ② 6 ③ 雷電 ④ ほとんど停滞 ⑤ 中・上層 ⑥ 少な
⑦ 西(北西) ⑧ 高 ⑨ 積乱雲 ⑩ 南東 ⑪ 西(北西)
解説 ①~④について
「前線に近い⿅児島の地上観測によると,全天が(①)に覆われしゅう⾬となっており,前(②)時間内に(③)があった。また,⼩笠原諸島付近には太平洋⾼気圧があり,(④)している。」
 
①~④は図1を用いて答えます。
 
①について
図1より、国際式天気記号で書かれた鹿児島の地上観測を読み取ります。雲の記号を見ると「雄大積雲」ですが、問題文より①は十種雲形で答えるべきなので、答えは「積雲」になります。
 
②③について
鹿児島の地上観測を読み取ると、過去天気として"雷電"があったことがわかります。過去天気は観測前の6時間の天気を表しています。よって②の答えは「6」、③の答えは「雷電」です。
④について
図1の⼩笠原諸島付近の太平洋⾼気圧を見ると「ALMOST STNR」と書かれています。これは「ほとんど停滞」という意味です。
解説 ⑤~⑨について
「気象衛星⽔蒸気画像では,朝鮮半島の南部にやや暗い部分が⾒え,その領域では,対流圏(⑤)で⽔蒸気が(⑥)いことが推定される。また,東シナ海には,台湾の北と地上低気圧の東側に⽩く輝く雲域がある。可視画像では,これらの雲域の(⑦)側に,太陽光による影が⾒られ,雲頂の(⑧)い(⑨)であることがわかる。」
 
⑤~⑨は図1と図2を用いて答えます。
 
⑤について
解答の選択肢は「下層」「中・上層」「上層」です。気象衛星の水蒸気画像は、対流圏上・中層にある水蒸気からの放射を観測して写している画像です(詳しくは気象庁HPをご覧ください)。よって正解は「中・上層」です。
 
ちなみに赤外線は下層からも放射されていますが、衛星に届く前に水蒸気に吸収されてしまうため、水蒸気画像ではとらえることができません(詳しくは「水蒸気画像の見方について(岸本,1997)」をご覧ください)。
 
⑥について
水蒸気画像は、水蒸気の多いところが白く、少ないところが黒く写るように処理されています。問題文に「朝鮮半島の南部にやや暗い部分が⾒え」とあるので、水蒸気は少ないです。よって正解は「少な」です。※送り仮名に注意!
 
⑦について
図1より東シナ海の北緯30°線上に低気圧があることがわかります。図2の水蒸気画像では、地上低気圧がある位置の東側に白い雲域が見られます。これと同じ位置を、図2の可視画像で確認すると、西~北西方向に太陽光の影が見られます。よって正解は「西」もしくは「北西」です。
 
※太陽光の影は分かりづらいと思います。どのように写るかは気象衛星センターHPをご参考ください。
 
⑧⑨について
低気圧の周りにあって、水蒸気画像では白く輝いていて、可視画像では白く写る&太陽光の影ができることから、背の高い積乱雲だとわかります。よって正解は、⑧が「」、⑨が「積乱雲」です。
解説 ⑩⑪について
「停滞前線に近い東シナ海は,850hPa天気図では低圧部となっており,500hPa天気図では⼤陸にあるトラフの(⑩)側でかつ太平洋⾼気圧の(⑪)側に位置しており,降⽔の発⽣しやすい気圧配置となっている。」
 
⑩⑪は図1,図3,図4を用いて答えます。
 
500hPa天気図に「850hPa天気図の低圧部」と「地上太平洋高気圧の中心」を描きます。また500hPa天気図に描かれている「大陸のトラフ」の位置を確認します。
 
⑩について
「850hPa天気の低圧部」と「⼤陸にあるトラフ」の位置関係を読み取ります。まずトラフ先端あたりに、緯線と経線に平行になるように十字を書きます。そこから850hPa天気の低圧部に向かって矢印を引いて方角を読み取ると、南東方向だとわかります。よって正解は「南東」です。
 
⑪について
「850hPa天気の低圧部」と「地上太平洋高気圧の中心」の位置関係を読み取ります。どちらも北緯30°の線上にあるため、正解は「西」です。
 
ちなみに地上の太平洋高気圧に対応するように、500hPa天気図には高圧部が解析されています。ここから「850hPa天気の低圧部」を見ると、北西方向に位置しているとわかります。よって「西」も正解のようです。

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