【第51回】2019年1月試験

【第51回】学科専門・問題4(2019年1月試験)

 気象庁の数値予報モデルの物理過程について述べた次の⽂(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から⼀つ選べ。

  1. (a) ⼤気中における降雪の融解や降⽔の蒸発の効果は予測結果への影響が⼩さいことから,数値予報モデルでは計算されていない。

  2. (b) メソモデルは格⼦間隔が5kmであり,個々の積雲の振る舞いを⼗分表現できることから,積雲対流パラメタリゼーションは使われていない。

  3. (c) 積雪の有無は地上気温に⼤きな影響を与えることから,数値予報モデルにおける積雪の有無が現実と異なる場合,地上気温の予測における誤差の原因となりうる。

  4. (d) ⼤気境界層過程では,境界層中にある様々な渦による,運動量・熱・⽔蒸気の輸送の効果を扱う。これらの効果は定常的であり⽇変化は⼩さい。

(a) (b) (c) (d)
答え
④ 誤 誤 正 誤
解説 (a)について
「⼤気中における降雪の融解や降⽔の蒸発の効果は予測結果への影響が⼩さいことから,数値予報モデルでは計算されていない。」

これはです。

数値予報モデルでは、降雪の融解や降⽔の蒸発の効果といった水の相変化を方程式に取り入れています。

「数値予報モデル=コンピュータの中に作った仮想の地球大気モデル」です。

数値予報モデルは物理法則に基づく方程式によって表されています。物理法則には力学過程(大気の流れ)と物理過程(降水・雲・放射など)があります。

解説 (b)について
「メソモデルは格⼦間隔が5kmであり,個々の積雲の振る舞いを⼗分表現できることから,積雲対流パラメタリゼーションは使われていない。」

これはです。

メソモデルは積雲対流パラメタリゼーションを使っています。

メソモデルの格⼦間隔は5kmですが、個々の積雲は5kmよりも小さいです。そのためメソモデルでは個々の積雲の振る舞いを⼗分に表現できません。

「パラメタリゼーション」とは、格子間隔よりも小さな現象を取り込む計算技術です。

解説 (c)について
「積雪の有無は地上気温に⼤きな影響を与えることから,数値予報モデルにおける積雪の有無が現実と異なる場合,地上気温の予測における誤差の原因となりうる。」

これはです。

積雪があると、水蒸気が凝結して雨が降ったり、日差しが遮られて放射過程が変わったりするので、地上気温に影響がでます。(「解説 (a)について」の画像をご参考ください。)

よって地上気温の予測における誤差の原因になります。

解説 (d)について
「⼤気境界層過程では,境界層中にある様々な渦による,運動量・熱・⽔蒸気の輸送の効果を扱う。これらの効果は定常的であり⽇変化は⼩さい。」

これはです。

「解説 (a)について」の画像より、⼤気境界層過程では運動量・熱・⽔蒸気の輸送の効果を扱います。

の輸送の効果を扱っているということは、温度に影響します。

温度は昼夜の日変化が大きいため、「これらの効果は定常的であり⽇変化は⼩さい。」としているのは誤りです。

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