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ふつう、空気は上に行くほど冷たくなります。ところが、ある高さの範囲だけ「上に行くほど暖かくなる」層ができることがあります。これが逆転層です。この記事では、逆転層とは何か、どんな種類があるのか、天気にどう影響するのか、そしてラジオゾンデの鉛直分布図でどう見分けるのかを解説します。
この記事のポイント
- 逆転層は、上に行くほど気温が高くなる、とても安定した層。対流をおさえる「ふた」になる。
- 主な種類は、放射性(接地)・沈降性・前線性・移流性の4つ。
- 鉛直分布図では「逆転層のすぐ上の湿度」が見分けるカギ。沈降性は上が乾燥、前線性は上が湿っていることが多い。
逆転層とは
対流圏では、上に行くほど気温が下がるのがふつうです。平均すると、高さ100mあたり約0.65℃の割合で下がります。
これに対して、ある高さの範囲で上に行くほど気温が高くなる層を逆転層(気温の逆転層)といいます。

逆転層では、上に暖かく軽い空気、下に冷たく重い空気があります。このため空気がひっくり返りにくく、とても安定しています。その結果、次のようなことが起こります。
- 下からの対流(上昇気流)がおさえられ、逆転層が「ふた」の役割をする
- 逆転層の下に、霧・もや・煙や汚れた空気がたまりやすい
- 積雲や層積雲の頭(雲頂)が、逆転層の高さでそろうことがある
- 電波が曲げられて、気象レーダーに「異常伝搬」による偽エコーが出ることがある
逆転層は、できる原因によっていくつかの種類に分けられます。ここからは代表的な4つを見ていきましょう。
放射性逆転層(接地逆転層)
晴れて風の弱い夜には、地面が赤外線を出して冷えていきます(放射冷却)。すると、地面に接している空気から冷やされ、地面のすぐ上がいちばん冷たく、上に行くほど暖かいという逆転層ができます。これを放射性逆転層、または地面に接してできるので接地逆転層といいます。

- 雲がなく、風が弱い夜ほど強くなります。雲があると地面から出た赤外線が雲に吸収されて戻ってくるため、冷え込みが弱くなります。
- 明け方に最も強くなり、日が昇って地面が暖まると、下から崩れて消えていきます。
- 盆地や谷では、冷えて重くなった空気が底にたまり、特に強い逆転層ができます。
- 地面付近の空気が露点温度まで冷えると、放射霧が発生します。
沈降性逆転層
高気圧の中では、上空の空気がゆっくりと下降(沈降)しています。下降する空気はまわりの気圧が高くなるので押し縮められ(断熱圧縮)、温度が上がります。同時に、温度が上がるので相対湿度は下がり、とても乾いた空気になります。

この暖かく乾いた空気が、下層の冷たく湿った空気の上にふたをするように重なると、その境目に沈降性逆転層ができます。高度1〜2km程度(850〜800hPa付近)に現れることが多く、その下には層積雲などの低い雲が広がることがあります。
鉛直分布図で見ると、逆転層のすぐ上で湿度が急に下がる(非常に乾燥している)のが、沈降性逆転層の大きな特徴です。
前線性逆転層と移流性逆転層

前線性逆転層(転移層)
前線では、暖かく軽い空気が冷たく重い空気の上にのり上げています。そのため、前線面をはさんで、下は寒気、上は暖気という逆転層ができます。これを前線性逆転層(転移層)といいます。
- 前線面は傾いているので、前線から寒気側に離れるほど、逆転層は高い所に現れます。
- のり上げる暖気は湿っていることが多いため、逆転層の上でも湿度が高いことがよくあります。この点が、上が乾燥している沈降性逆転層との違いです。
移流性逆転層
暖かい空気が、冷たい地面や海面の上に流れ込む(移流する)と、空気は下から冷やされます。すると、下が冷たく上が暖かい移流性逆転層ができます。
- 暖かく湿った空気が冷たい海の上に流れ込むと、下から冷やされて海霧(移流霧)が発生します。初夏の三陸沖や北海道の東部の海霧が代表例です。
- 海陸風などによって、温度の違う空気が重なることでできる逆転層も、この仲間に入ります。
このほか、地表付近の空気が風によってかき混ぜられたとき、そのかき混ぜられた層の上端にできる乱流性逆転層もあります。
鉛直分布図での見分け方
気象予報士試験では、ラジオゾンデの鉛直分布図(気温・湿度・風)から、逆転層の種類を判断する問題がよく出ます。次の表のポイントをおさえておきましょう。
| 種類 | できる原因 | 主な場所・時間 | 見分けるポイント |
|---|---|---|---|
| 放射性(接地) | 夜間の放射冷却 | 地表付近。晴れて風の弱い夜〜明け方 | 地表がいちばん冷たい |
| 沈降性 | 高気圧内の沈降による断熱昇温 | 上空(850〜800hPa付近など) | 逆転層の上が急に乾燥 |
| 前線性 | 寒気の上に暖気がのり上げる | 前線面に沿って | 逆転層の上が湿っていることが多い |
| 移流性 | 暖気が冷たい地面・海面上に流れ込む | 下層。海上や沿岸 | 海霧(移流霧)を伴いやすい |
特に、上空にある逆転層が沈降性か前線性かは、逆転層のすぐ上の湿度で見分けます。上が急に乾いていれば沈降性、上も湿っていれば前線性と考えられます。
(参考)
- 気象庁「大気の構造と流れ」:対流圏は上空ほど気温が低下し、対流圏より上では気温の低下率が小さいか逆に上昇する
- 気象庁キッズ「放射冷却」:晴れた夜に地面の熱が宇宙へ逃げて冷え込むしくみ
- 気象庁「気象レーダー」:気温が高度とともに急増するなど屈折率が高さ方向に大きく変化すると異常伝搬が発生する
- 気象庁 気象衛星センター「気象衛星画像の解析と利用」第4章(PDF):上層の高気圧による沈降で乾燥域が形成される
まとめ
- 逆転層は、上に行くほど気温が高くなる層。とても安定で、対流をおさえる「ふた」になる。
- 放射性(接地)逆転層は、晴れて風の弱い夜の放射冷却でできる。明け方に最も強く、放射霧の原因になる。
- 沈降性逆転層は、高気圧内の沈降による断熱昇温でできる。逆転層の上が急に乾燥しているのが特徴。
- 前線性逆転層は前線面に沿ってでき、逆転層の上が湿っていることが多い。移流性逆転層は暖気が冷たい地面・海面上に流れ込んでできる。
- 鉛直分布図では、逆転層のすぐ上の湿度で沈降性か前線性かを見分ける。
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