熱力学の基礎【大気の熱力学】

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雲ができる、雨が降る、フェーン現象が起こる。こうした現象を理解する土台が「大気の熱力学」です。この記事では、空気を分子の集まりとして見るところから始めて、温度・圧力・密度の関係(状態方程式)と、上昇する空気が冷える理由(断熱変化)までをやさしく説明します。

この記事のポイント

  • 空気は分子の集まりで、温度は分子の運動の激しさ、圧力は分子が面をたたく力を表します。
  • 気圧・密度・気温の間には、状態方程式 p=ρRT という関係があります。
  • 上昇する空気は膨張して冷えます。目安は、乾燥した空気で約10℃/km、飽和した空気で約5℃/kmです。

空気は分子の集まり

空気は「何もない空間」ではなく、窒素や酸素などの分子がたくさん集まったものです。分子はとても小さく目には見えませんが、いつも勢いよく飛び回り、ほかの分子や壁とぶつかり合っています。

箱の中の分子の模式図。温度が低いと分子の動きがゆっくりで、温度が高いと動きが激しく壁を強くたたく
  • 温度:分子の運動の激しさ(速さ)を表す量。分子が速く動いているほど温度が高い。
  • 圧力:分子が面にぶつかって押す力を、単位面積あたりで表したもの。大気の圧力が気圧。

分子の動きが激しいほど、壁を強く、何度もたたきます。そのため、同じ体積に同じ数の分子があれば、温度が高いほど圧力は大きくなります。

密度と膨張・圧縮

密度とは、1m³あたりの質量[kg/m³]のことです。地上付近の空気の密度は約1.2kg/m³で、上空ほど小さくなります。

同じ数の分子を大きな箱に入れると密度が小さく(膨張)、小さな箱に入れると密度が大きく(圧縮)なることを示す図
  • 膨張:同じ空気(同じ質量)の体積が大きくなること。分子がまばらになり、密度は小さくなる。
  • 圧縮:同じ空気の体積が小さくなること。分子がぎっしり詰まり、密度は大きくなる。

状態方程式 p=ρRT

気圧・密度・気温の3つは、ばらばらではなく、次の関係で結びついています。これを(理想気体の)状態方程式といいます。

p = ρRT

  • p:気圧[Pa](1hPa=100Pa)
  • ρ:空気の密度[kg/m³]
  • R:気体定数(乾燥空気では約287 J/(kg・K))
  • T:絶対温度[K](摂氏温度+273)

例えば、密度1.2kg/m³・気温15℃(288K)の空気なら、p=1.2×287×288 ≒ 99000Pa、つまり約990hPaとなり、地上の気圧とほぼ同じになります。

分子の見方で考えると、式の意味が分かりやすくなります。

  • 密度ρが大きい(分子が多い)ほど、壁をたたく回数が増えるので、圧力pは大きい。
  • 温度Tが高い(分子が速い)ほど、強くたたくので、圧力pは大きい。
  • 同じ気圧で比べると、暖かい空気ほど密度が小さい(軽い)。暖かい空気が浮き上がるのはこのため。

「温めると気圧が上がる」のは、体積(密度)が変わらない場合だけです。大気中の空気は自由に膨らめるので、3つの量の変化をセットで考えることが大切です。

断熱変化:上昇する空気は冷える

空気のかたまり(気塊)が、まわりと熱をやりとりせずに膨張したり圧縮されたりすることを、断熱変化といいます。上昇や下降する空気は、短い時間ではほぼ断熱的に変化すると考えてよいです。

上昇する空気のかたまりが膨張して冷え、20℃・10℃・0℃と変わる様子。下降する空気は圧縮されて暖まる
  • 断熱膨張:上空ほど気圧が低いので、上昇した空気は膨らむ。膨らむときにまわりの空気を押しのける仕事をし、そのエネルギーを自分の分子の運動から出すので温度が下がる。
  • 断熱圧縮:下降する空気は、まわりの気圧が高くなって押し縮められ、仕事をされて温度が上がる。

水蒸気が凝結していない空気(乾燥空気、または飽和していない湿った空気)が上昇すると、1kmにつき約10℃下がります。これを乾燥断熱減率といいます(より正確には約9.8℃/km)。

乾燥断熱減率と湿潤断熱減率

上昇して温度が下がると、やがて空気は飽和し、水蒸気が凝結して雲ができます。凝結のときには潜熱(水蒸気がもっていた熱)が放出され、空気を暖めます。

地上25℃の空気が乾燥断熱減率で1kmまで上昇して15℃で飽和し、その後は湿潤断熱減率で冷えて3kmで5℃になる例。乾燥のままなら−5℃
  • 乾燥断熱減率:飽和していない空気が上昇するときの冷え方。約10℃/km。
  • 湿潤断熱減率:飽和した空気が上昇するときの冷え方。凝結の潜熱があるぶん小さく、目安は約5℃/km(気温が高いほど小さく、低温の上空では乾燥断熱減率に近づく)。

温位(参考)

空気を1000hPaまで乾燥断熱的に下ろしたときの温度を温位といいます。乾燥断熱変化では温位は変わらないので、高さの違う空気どうしを比べたり、空気の動きを追ったりするのに便利な量です。

まとめ

  • 空気は分子の集まり。温度は分子の運動の激しさ、圧力は分子が面をたたく力(単位面積あたり)。
  • 膨張すると密度は小さく、圧縮すると密度は大きくなる。
  • 状態方程式 p=ρRT。同じ気圧なら、暖かい空気ほど密度が小さく軽い。
  • 上昇する空気は膨張して冷え(断熱膨張)、下降する空気は圧縮されて暖まる(断熱圧縮)。
  • 冷え方の目安は、飽和していない空気で約10℃/km(乾燥断熱減率)、飽和した空気で約5℃/km(湿潤断熱減率)。

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