【第64回】実技2・問題4(2025年8月試験)

問題

XX年6月10日から12日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する問題です。予想図の初期時刻は、いずれも6月10日21時(12UTC)です。東シナ海から日本の南にのびる停滞前線(梅雨前線)上の低気圧と、その後日本の南で発生して発達しながら日本の東へ進む低気圧が扱われ、大気潮汐による気圧変化を考慮して低気圧の盛衰を推定する問題も出題されています。問4では、図11〜図13(36時間後〜48時間後の500hPa高度・渦度、地上気圧・降水量・風、500hPa気温・700hPa湿数、850hPa気温・風・700hPa鉛直流の予想図)と図1、図9、図10を用いて、東シナ海の低気圧の衰弱と、日本の南で新たに発生して日本の東へ進む低気圧の発達、それに対応するトラフ、前線を読み取ります。

第64回実技2 図11 500hPa高度・渦度36時間予想図と地上気圧・降水量・風36時間予想図(12日9時)
第64回実技2 図12 500hPa高度・渦度48時間予想図と地上気圧・降水量・風48時間予想図(12日21時)
第64回実技2 図13 500hPa気温・700hPa湿数48時間予想図と850hPa気温・風・700hPa鉛直流48時間予想図(12日21時)

(1) 2つの低気圧の盛衰

48時間後の図12(下)には日本の東に中心気圧988hPaの低気圧が予想されていますが、これは図1の中心気圧1004hPaの低気圧が移動・発達したものではありません。これらの低気圧の盛衰に関する問いです。

①図10(上)を用いて、華北から東シナ海にかけての2つのトラフについて、トラフと5760mの等高度線との交点の緯度・経度を1°刻みで答えます。②図9を用いて、地上気圧の低下が大きく前線活動が活発であると考えられる範囲の中心付近の緯度・経度を5°刻みで答え、その理由を気温、風、温度移流および上昇流に言及して60字程度で述べます。③②の領域と①のトラフとの位置関係を16方位で「トラフは、②の領域の( )の位置にある。」の形で答えます。④図1および図10を用いて、図1で東シナ海にある低気圧の12時間後までの移動方向を16方位で、速さを5ノット刻みで答えます。⑤図11および図12を用いて、図12で日本の東にある低気圧の前12時間の移動方向を16方位で、速さを5ノット刻みで答えます。⑥図1で東シナ海にある低気圧は、36時間後の12日9時には北緯29°東経130°に達し衰弱します。この低気圧が衰弱する理由のうち、対応する500hPaのトラフの、12時間後から36時間後にかけての地上低気圧との位置関係について25字程度で述べます。

⑦図12で日本の東にある低気圧中心は、30時間前の11日15時(図略)には低気圧循環として予想されていますが、36時間前の11日9時(図10)にはLでは示されていません。11日9時の時点で、低気圧の中心として条件が最も整っている位置の緯度・経度を、次の㋐㋑の方法に従って1°刻みで答えます。㋐⑤の低気圧の移動速度に基づいて、11日9時(図10)における仮の推定位置を答えます。㋑㋐の仮の推定位置を、図9の気象要素を参考にし、図10の気圧配置や風向に矛盾のないように、緯度・経度それぞれ3°以内の範囲で最小限移動させた緯度・経度を答えます。⑧⑦㋑で求めた位置の気圧から、12日9時における低気圧中心の気圧を差し引いた値を、図中の等圧線の数値に基づき符号を付けて答えます。

(2) 低気圧の発達に対応する2つのトラフ

図11(下)で八丈島付近にある低気圧は12日21時にかけて発達し、さらにその24時間後の13日21時(図略)には中心気圧980hPaと予想され、発達が続きます。①図11(上)において、12日9時以降の地上低気圧の発達に対応する2つのトラフを解答図に太実線で描画します。②①で描画した2つの太実線それぞれの中心位置における500hPa面の高度を比較し、高いほうのトラフをA、低いほうをBとして、それぞれのトラフの12日9時以降の低気圧の発達への寄与について、時間経過を示して40字程度で述べます。

(3) 日本の東の低気圧に伴う前線

図12(上)、図13に着目して、図12(下)の日本の東の低気圧に伴う前線を、枠内の範囲について前線記号を用いて描画します(温暖前線、寒冷前線それぞれの一方の端は枠まで達しているものとします)。

答え

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(1)

① 北緯35°(34°)東経120°(121°)、北緯33°東経126°(125°、127°)(順不同)

② 北緯30°東経135°
理由:850hPaの12℃〜15℃で南北の温度傾度が大きく、強い南風による暖気移流が強く、700hPaの上昇流が大きいため。

③ トラフは、②の領域の西北西(北西)の位置にある。

④ 方位:東北東(東) 速さ:10(15)ノット

⑤ 方位:北東(東北東) 速さ:25ノット

⑥ トラフは、低気圧中心の北から北東に離れていく。

⑦ ㋐ 北緯28°(27°、29°)東経132°(131°、133°)
  ㋑ 北緯31°(30°)東経133°(132°、134°)

⑧ +8hPa

(2)

①(解答例の図)

第64回実技2 問4(2)①の解答例 12日9時の500hPa予想図に描画した2つのトラフ

② トラフAは主に12日21時までの発達に寄与し、トラフBはその後の発達に寄与する。

(3)

(解答例の図)低気圧中心の北東にある接続点から温暖前線が東南東へ、寒冷前線が南南西〜南西へのびる。

第64回実技2 問4(3)の解答例 12日21時の日本の東の低気圧に伴う温暖前線と寒冷前線

( )内は別解として認められているものです。

解説

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(1)① 華北から東シナ海の2つのトラフ

トラフは、等高度線が低緯度側へ張り出す(低気圧性の曲率が最大となる)所で、正渦度の極大域を伴うことが多いです。図10(上)で5760mの等高度線をたどると、華北付近と東シナ海北部付近の2か所で南へ凸になっており、それぞれ正渦度の極大域を伴っています。トラフ線と5760mの等高度線との交点は、北緯35°東経120°(北緯34°、東経121°も可)と北緯33°東経126°(東経125°、127°も可)です。

(1)② 前線活動が活発な領域

地上気圧の低下が大きく前線活動が活発な所は、下層の温度傾度が大きく(傾圧性が大きく)、そこに強い暖気移流があって上昇流が強い所です。図9で見ると、北緯30°東経135°付近では、

  • 850hPaの12℃〜15℃の等温線が混んでいて、南北の温度傾度が大きい(前線帯)。
  • 南よりの強い風が等温線を横切って暖かい側から吹き込み、暖気移流が強い。
  • 700hPaで網掛けの上昇流域が広がり、上昇流が大きい。

という条件がそろっています。暖気移流の強い所では層厚が増して地上気圧が低下し、上昇流で凝結が進んで前線活動が活発になります。

(1)③ 領域とトラフの位置関係

①の2つのトラフのうち東シナ海のトラフ(北緯33°東経126°付近)は、②の領域(北緯30°東経135°)から見て西北西(北西)にあります。トラフの前面(東側)では正渦度移流による上昇流が生じやすく、地上低気圧の発生・発達に好都合な位置関係です。

(1)④ 東シナ海の低気圧の移動

図1の東シナ海の低気圧の中心と、12時間後の図10(下)で対応する低気圧(東シナ海の「L」)の中心を比べると、12時間で約2°(約120海里)東北東へ移動しています。120海里÷12時間=10ノットです(東、15ノットも可)。図1の15ノットよりやや遅くなっています。

(1)⑤ 日本の東の低気圧の移動

図11(下)の八丈島付近の低気圧(1000hPa)の中心と、12時間後の図12(下)の日本の東の低気圧(988hPa)の中心を比べると、北東(東北東)へ約5°(約300海里)移動しており、300海里÷12時間=25ノットです。距離は、緯度1°=60海里を目安に、図の緯線間隔(10°=600海里)をものさしにして測ります。

(1)⑥ 東シナ海の低気圧が衰弱する理由

温帯低気圧は、上空のトラフが地上低気圧の西側にあって、低気圧の中心軸が上空ほど西に傾いているときに発達します。図10(上)・図11(上)で東シナ海のトラフの動きを追うと、12時間後から36時間後にかけて、トラフは東シナ海の地上低気圧の西側の位置から低気圧中心の北〜北東へ離れていきます。トラフが低気圧の真上を通り越して離れていくと、トラフ前面の正渦度移流による上昇流が地上低気圧の上にかからなくなるため、低気圧は発達できず衰弱します。

(1)⑦ 11日9時の低気圧中心の推定

㋐:⑤で求めた移動(北東〜東北東へ25ノット)が続いていたと仮定し、12日9時の低気圧の位置(図11(下)、八丈島付近)から24時間さかのぼります。25ノット×24時間=600海里(緯度約10°分)を、移動方向と逆向き(南西〜西南西)にたどると、北緯28°東経132°付近になります(北緯27°、29°、東経131°、133°も可)。

㋑:㋐の位置を、図9で暖気移流・上昇流が強く前線活動が活発な所(②の領域、北緯30°東経135°付近)や、図10(下)の気圧の谷・風向の変化(低気圧性の循環)と矛盾しない位置に、最小限移動させます。図10(下)でこの付近の等圧線や風向を確認し、気圧の谷にあたり風向が低気圧性の循環に矛盾しない位置を探すと、図9の前線活動の活発な領域に近い北側・東側へ寄せた位置が適当です。したがって、北緯31°東経133°(北緯30°、東経132°、134°も可)が低気圧の中心として最も条件が整っている位置です。

(1)⑧ 24時間の気圧変化

図10(下)で⑦㋑の位置の気圧は、等圧線から約1008hPaと読めます。12日9時(図11(下))の低気圧中心は1000hPaの等圧線で囲まれているので、その値から、1008−1000=+8hPaとなります。11日9時の「低気圧のたまご」の段階から、24時間で8hPa程度深まったことになります。

(2)① 2つのトラフの描画

図11(上)の四角枠内では、2つの正渦度の帯状域があり、それぞれ等高度線の曲率が低気圧性に大きくなっています。

  • 北側のトラフ:朝鮮半島の東から日本海中部にかけて、正渦度域を伴い、等高度線が南へ凸になっている所。
  • 南側のトラフ:東シナ海から九州付近を通り本州南岸に向かって、南西から北東へのびる谷で、正渦度の帯状域を伴っている所。

これらに沿って、等高度線の凸の頂点を結ぶように太実線を描きます。いずれも八丈島付近の地上低気圧の西〜北西側にあり、今後の発達に対応するトラフです。

(2)② トラフA・Bの寄与

2つのトラフの中心位置の高度を比べると、南側のトラフの方が北側のトラフより高い(より低緯度にあり、5820mの等高度線に近い)ので、南側がA、北側がBです。

トラフAは地上低気圧に近い西側にあり、12日21時(図12(上))にかけて低気圧に接近して、主に12日21時までの発達に寄与します。一方、トラフBはより上流(北西)にあり、12日21時には低気圧の西側に近づいてきている段階なので、その後(13日21時にかけて)の発達に寄与すると考えられます。トラフが次々と低気圧に接近することで、低気圧の発達が続くことになります。

(3) 日本の東の低気圧に伴う前線

前線は、850hPaの等温線の集中帯(図13(下))の暖気側の縁に沿って解析し、地上の気圧の谷や風向の変化(図12(下))、上昇流域・湿潤域の分布とも整合させます。

  • 温暖前線:低気圧中心から東南東へのびる等温線の集中帯の南縁に沿って描きます。等圧線もこの線に沿って折れ曲がり、気圧の谷となっています。
  • 寒冷前線:低気圧中心から南へのび、南西へ向きを変える等温線の集中帯の東縁(暖気側)に沿って描きます。図12(下)でも、この線を境に風向が南よりから西〜北西よりに変わる気圧の谷がみられます。
  • 解答例では、温暖前線と寒冷前線の接続点は低気圧中心の北東にあり、中心から接続点までは短い前線でつながっています。図12(上)・図13(上)で500hPaのトラフ・寒気が低気圧の西側から南側へ回り込みつつあるように、低気圧が最盛期に近づき、中心が前線の接続点から寒気側へ離れ始めている段階と考えられます。

前線記号は、温暖前線は半円、寒冷前線は三角を、それぞれ進行方向(暖気側)に付けます。

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