【第56回】学科一般・問題5(2021年8月試験)

 地球大気の温室効果の原理について述べた次の文章の下線部(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、以下の条件が満たされているものと仮定する。

・太陽放射は大気層を完全に透過する。
・地表面は黒体で全ての放射を完全に吸収する。
・大気は地表面からの黒体放射を完全に吸収する。
・大気の温度は一様であり、大気および地表面は放射平衡状態にある。

 地球に大気がないときの、地表面が受け取る太陽放射量と放射平衡状態にある地表面温度を絶対温度T0とする。図のように大気があるときには、大気上端の放射収支から、大気の上向きの長波放射量は(a)地表面が吸収する太陽放射量と等しい。一方、地表面の放射収支から、太陽放射量と大気の下向き長波放射量の和は地表面からの黒体放射量と等しい。また、黒体放射量は物質の絶対温度の(b)4乗に比例する。これらより、大気の温度は(c)21/4T0となり、地表面温度は(d)T0となる。

(a) (b) (c) (d)
答え
② 正 正 誤 誤
解説 放射の知識

まず放射の知識をおさえておきます。

■黒体
入射されたエネルギーをすべて吸収する仮想的な物体。地球や太陽はほぼ黒体とみなされることが多い。

■放射強度
放射されるエネルギーがどのくらい強いかを数値で示したもの。

黒体から放射される電磁波の波長放射強度は、その黒体の温度だけで決まっています。これをプランクの法則と呼んでいます。

(新 百万人の天気教室 (白木正親、成山堂書店)、P41)

図より、物体の温度が高いほど、波長が短くて、放射強度が強いことがわかります。(300Kのグラフより6000Kのグラフのほうが、左にある(=波長が短い)&上にある(放射強度が強い))

■ステファン・ボルツマンの法則
プランクの法則の図で、すべての波長における放射エネルギーを合算すると、全エネルギーを求めることができます。この全エネルギーと温度の間には、以下の式が成り立ちます。これをステファン・ボルツマンの法則と呼んでいます。

この法則は「黒体放射の放射強度Iは温度の4乗に比例する」ということを示しています。

■放射平衡状態
太陽から地球に入る熱エネルギー(太陽放射)と、地球から出ていく熱エネルギー(地球放射)が釣り合って、地球の温度が変化しない状態にあることを放射平衡の状態にあるといいます。

解説 (a)について

「大気上端の放射収支から、大気の上向きの長波放射量は(a)地表面が吸収する太陽放射量と等しい。」

これはです。

問題文より、以下の条件があります。

条件

  • 太陽放射は大気層を完全に透過する。
  • 地表面は黒体で全ての放射を完全に吸収する。
  • 大気は地表面からの黒体放射を完全に吸収する。
  • 大気の温度は一様であり、大気および地表面は放射平衡状態にある。

通常だと、太陽放射は大気層で少し吸収されたり、地表面は完全な黒体ではなかったりします。

しかし今回の問題では上記の条件があるため、図をもとに単純に考えていきます。

図より、大気上端の放射収支(エネルギー収支)に注目すると、地球に入る放射は「太陽放射」のみ、地球から出ていく放射は「大気の上向きの長波放射」のみとなります。

よって「太陽放射」と「大気の上向きの長波放射」は釣り合っています。

条件より太陽放射は大気層を完全に透過するため、地球に入る「太陽放射」は、そのまま地表面で吸収されます。

そのため「大気の上向きの長波放射量は(a)地表面が吸収する太陽放射量と等しい。」は正しいです。

解説 (b)について

「黒体放射量は物質の絶対温度の(b)4乗に比例する。」

これはです。

ステファン・ボルツマンの法則より、黒体放射量は物質の絶対温度の4乗に比例します。

解説 (c)(d)について

「大気の温度は(c)21/4T0となり、地表面温度は(d)T0となる。」

これは両方ともです。

問題文に「地表面の放射収支から、太陽放射量と大気の下向き長波放射量の和は地表面からの黒体放射量と等しい。」とあります。

これを図にすると、以下のようになります。

また、地球に大気がないときの状況を考えると以下のようになります。

地球に大気がある場合の地表面の温度をT1、大気の温度をT2と仮定します。

ステファン・ボルツマンの法則より、それぞれの放射強度は以下のようになります。

今回の問題では、以下3つの放射収支(エネルギー収支)は釣り合っています。

釣り合っている

  • 大気上端の放射収支
  • 地表面の放射収支
  • 大気における放射収支

式で表すと以下のようになります。

(c)「大気の温度」を求める

まず(c)の「大気の温度」を求めます。

今回は大気の温度をT2と仮定しました。

式を使ってT2を求めます。

【地球に大気がないとき】と【大気上端のエネルギー収支】の式より、T2は以下のように求められます。

よって(c)は「21/4T0」ではなく「T0」です。

(d)「地表面温度」を求める

次に(d)の「地表面温度」を求めます。

今回は地表面温度をT1と仮定しました。

式を使ってT1を求めます。

【大気におけるエネルギー収支】の式より、T1は以下のように求められます。

よって(d)は「T0」ではなく「(2の4乗根)×T0」です。

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