【第55回】2021年1月試験

【第55回】学科一般・問題11(2021年1月試験)

気候変動について述べた次の⽂(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から1 つ選べ。

  1. (a) ⼤規模な⽕⼭噴⽕により成層圏に放出された亜硫酸ガスが化学変化してできた微⼩な液滴のエーロゾルが全球に広がると,⽇射を散乱するために気温が低下する。

  2. (b) 気温が低下して地球表⾯の雪や氷の⾯積が増⼤すると,アルベドが⼤きくなって太陽からの放射エネルギーの吸収が減り,さらに気温低下をもたらす。

  3. (c) ⼤気中の⼆酸化炭素が増加すると,⼆酸化炭素が可視光線域に強い吸収帯を持つために,太陽からの短波放射の吸収量が増えて気温が上昇し,地球温暖化が引き起こされる。

  4. (d) 地球温暖化により永久凍⼟が融解すると,温室効果ガスのひとつであるメタンが⼤気中に放出され,気温がさらに上昇する。

(a) (b) (c) (d)
答え
② 正 正 誤 正
解説 (a)について
「⼤規模な⽕⼭噴⽕により成層圏に放出された亜硫酸ガスが化学変化してできた微⼩な液滴のエーロゾルが全球に広がると,⽇射を散乱するために気温が低下する。」

これはです。⼤規模な⽕⼭噴⽕が起こると、気温が低くなることがあります。

過去の事例で有名なのが、1991年のピナトゥボ山(フィリピン)の噴火です。噴火により約2000万トンの二酸化硫黄が成層圏に注入され、地球の温度を約0.5℃低下させました。

ちなみに「亜硫酸ガス=二酸化硫黄」です。

気象庁HPの画像を加工)

解説 (b)について
「気温が低下して地球表⾯の雪や氷の⾯積が増⼤すると,アルベドが⼤きくなって太陽からの放射エネルギーの吸収が減り,さらに気温低下をもたらす。」

これはです。

アルベドは、「太陽から地球に入射するエネルギー」を「地球で反射して出ていくエネルギー」で割った値です。

例えば、太陽から地球に入射するエネルギーを100、地球で反射して出ていくエネルギーを30とすると、アルベドは0.3になります。

アルベドは地面の状態(草・砂・雪など)によって数値が変わります。雪や氷は反射率が高いのでアルベドが⼤きいです。

アルベドが大きくなると「地球で反射して出ていくエネルギー」が大きくなるので、太陽からの放射エネルギーの吸収が減って気温が低くなります。

太陽放射に対する反射率

  • 新雪:79~95%
  • 旧雪:25~75%
  • 砂、砂漠:25~40%
  • 草地:15~25%
  • 裸地:10~15%
  • 森林地:10~15%

※一般気象学(小倉義光)p.113,表5.1より

解説 (c)について
「⼤気中の⼆酸化炭素が増加すると,⼆酸化炭素が可視光線域に強い吸収帯を持つために,太陽からの短波放射の吸収量が増えて気温が上昇し,地球温暖化が引き起こされる。」

これはです。

⼤気中の⼆酸化炭素が増加すると、⼆酸化炭素が赤外線域に強い吸収帯を持つようになります。

そして地球からの長波放射の吸収量が増えることで、エネルギーがこもり、気温が上昇します。(これを温室効果と呼びます。)

短波放射(太陽から地球に入る放射)

太陽光には、赤外線・可視光・紫外線・X線・ガンマ線が含まれています。

このうち、赤外線のエネルギーは二酸化炭素と水蒸気に吸収されます。

可視光のエネルギーは、あまり吸収されません。(「大気は可視光に対して透明」と言ったりします。)

紫外線のエネルギーは、成層圏より上空で酸素とオゾンに吸収されます。

長波放射・地球放射(地球から出ていく放射)

地球からは、赤外線領域のエネルギーが放射されています。

この赤外線エネルギーを吸収するのが二酸化炭素と水蒸気です。

しかし、すべての赤外線エネルギーが吸収されるわけではなく、波長8~12μmの赤外線は吸収されず宇宙に出ていきます。

この波長領域は「窓領域」と呼ばれ、気象衛星観測などに利用されています。

温室効果

二酸化炭素や水蒸気が多くなると、大気がお布団のような役割となって、地球から宇宙に熱が放出されるのを防いでしまいます。
(温室効果ガスは、メタン・フロン・一酸化二窒素などもあります。)

解説 (d)について
「地球温暖化により永久凍⼟が融解すると,温室効果ガスのひとつであるメタンが⼤気中に放出され,気温がさらに上昇する。」

これはです。

永久凍⼟(温度が2年以上連続して0°C以下になる地面)の中には、大量の有機物が含まれています。

地球温暖化によって永久凍土が融解すると、永久凍⼟の中の有機物が分解されて、大気中にメタンや二酸化炭素が放出されると考えられます。

メタンや二酸化炭素は温室効果ガスなので、大気中濃度が増加することで気温の上昇につながることが懸念されています。

気象庁HPの図を加工)

■参考
永久凍土の融解や海洋の温暖化によるメタンと二酸化炭素の急速な放出は、温暖化をかなり加速するのだろうか?(気象庁)
地球温暖化で永久凍土の融解はどこまで進むか?(国立環境研究所)

<< 前の問題

次の問題 >>

-【第55回】2021年1月試験
-