【第52回】2019年8月試験

【第52回】学科一般・問題6(2019年8月試験)

 北半球中緯度の⾃由⼤気中における低気圧周辺の傾度⾵と地衡⾵について述べた次の⽂章の下線部(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から⼀つ選べ。ただし,コリオリパラメーターと空気密度は低気圧周辺で⼀定とする。

 等圧線が等間隔で低気圧の中⼼の周りを同⼼円状に囲んでいる場合を考える。この低気圧周辺のある地点における傾度⾵の⾵向は(a)等圧線に沿った⽅向である。⼀⽅,その⾵速は,同じ地点における地衡⾵に⽐べて(b)⼤きい。また,傾度⾵の⾵速は,低気圧の中⼼から離れるにしたがって(c)⼩さくなる

(a) (b) (c)
答え
③ 正 誤 誤
解説 地衡風の知識
地衡風とは、気圧傾度力コリオリ力の影響を加味した風です。

  • 気圧傾度力=高気圧から低気圧に向かって働く力
  • コリオリ力=地球の自転によって働く力

気圧傾度力コリオリ力がバランスして吹く風が地衡風です。
地衡風平衡のとき(気圧傾度力)=(コリオリ力)です。

解説 傾度風の知識
地衡風は等圧線がまっすぐの時は成り立ちますが、低気圧や台風のように等圧線がカーブする場合は遠心力の影響も加味する必要があります。

地衡風に遠心力の影響を加味した風が傾度風です。

遠心力がどのように影響するかは、高気圧と低気圧の場合で異なります。

【高気圧の場合】

  • 気圧傾度力:中心 → 外側(高気圧から低気圧に向かって働く力だから)
  • コリオリ力:外側 → 中心(気圧傾度力とバランスするように働く力だから)
  • 遠心力:中心 → 外側(円の外側に向かって働く力だから)

3つの力がバランスをとっているので、矢印の向きより以下の式が成り立ちます。

コリオリ力)=(気圧傾度力)+(遠心力

地衡風平衡のとき(気圧傾度力)=(コリオリ力)なので、高気圧の傾度風は、地衡風に遠心力がプラスされたことになります。

よって「地衡風 < 傾度風」です。

【低気圧の場合】

  • 気圧傾度力:外側 → 中心(高気圧から低気圧に向かって働く力だから)
  • コリオリ力:中心 → 外側(気圧傾度力とバランスするように働く力だから)
  • 遠心力:中心 → 外側(円の外側に向かって働く力だから)

3つの力がバランスをとっているので、矢印の向きより以下の式が成り立ちます。

コリオリ力)+(遠心力)=(気圧傾度力

⇔(コリオリ力)=(気圧傾度力)ー(遠心力

地衡風平衡のとき(気圧傾度力)=(コリオリ力)なので、低気圧の傾度風は、地衡風に遠心力がマイナスされたことになります。

よって「地衡風 > 傾度風」です。

解説 (a)について
「低気圧周辺のある地点における傾度⾵の⾵向は(a)等圧線に沿った⽅向である。」

これはです。低気圧周辺では、傾度風は等圧線の方向に沿って吹きます。

解説 (b)について
「その⾵速は,同じ地点における地衡⾵に⽐べて(b)⼤きい。」

これはです。

低気圧周辺では、傾度風は地衡⾵に⽐べて小さいです。

解説 (c)について
「傾度⾵の⾵速は,低気圧の中⼼から離れるにしたがって(c)⼩さくなる。」

これはです。傾度風の風速は、低気圧の中心から離れると大きくなります。

低気圧の傾度風は、地衡風に遠心力がマイナスされた力です。

低気圧の中⼼から離れるにしたがって遠心力は小さくなるので、傾度風は大きくなります。

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