【第52回】学科一般・問題7(2019年8月試験)

 下図は静力学平衡と地衡風平衡が成り立つ北半球中緯度の大気における850hPa等圧面の等高度線図であり,南の方が高度が高い。一方,500hPa等圧面では,全域で同じ風速の南風が吹いている。このとき,次の文(a)~(d)の正誤について,下記の①~⑤の中から正しいものを一つ選べ。ただし,850hPa等圧面から500hPa等圧面にかけての風向の変化は180°以内とする。

(a) 850hPa面の風速の絶対値は,南側ほど大きい。

(b) 850hPa面と500hPa面の間の気層の平均気温は,東西方向で比較すると東側ほど高い。

(c) 850hPa面と500hPa面の間の気層の平均気温は,南北方向で比較すると北側ほど高い。

(d) 850hPa面と500hPa面の間の気層では,平均すると暖気移流となっている。

① (a)のみ誤り
② (b)のみ誤り
③ (c)のみ誤り
④ (d)のみ誤り
⑤ すべて正しい

答え
④ (d)のみ誤り
解説 静力学平衡と地衡風平衡について
<静力学平衡>
鉛直方向の運動がない状態のことです。天気の変化は「地上~対流圏界面」の範囲で起こるものがほとんどなので、鉛直方向の範囲は約10kmです。一方、水平方向は地球全部が対象範囲なので、鉛直方向よりもかなり広いです。そのため鉛直方向の運動を無視しても精度よく天気予報ができます。GSMモデルなどは静力学平衡が成り立つと見なして方程式を作り、天気予報をしています。
 
<地衡風平衡>
気圧傾度力とコリオリ力がバランスをとった状態のことです。
気圧傾度力=高気圧から低気圧に向かって働く力
コリオリ力=地球の自転によって働く力
下図の右側の状態が地衡風平衡です。
解説 (a)について
「850hPa面の風速の絶対値は,南側ほど大きい。」
 
これはです。問題の図より、南側のほうが等圧線が混みあっていて気圧傾度が大きいことが分かります。気圧傾度が大きくなると、風速も大きくなります。
解説 (b)(c)(d)について
まず850hPa面の風向を考えます。問題文の図を東側から見てみます。
高度1320mにあるA地点とB地点の気圧を考えます。
A地点の真上の高度1500m地点に850hPa面があるので、そこよりも地面に近いA地点の気圧は850hPaよりも高いです。
B地点は850hPa面上の点なので、B地点の気圧は850hPaです。
 
A地点のほうが高気圧、B地点のほうが低気圧なので、A→Bすなわち南→北に向かって気圧傾度力が働きます。
 
地衡風平衡が成り立つので、この気圧傾度力コリオリ力が働いて、2つの力がバランスをとって地衡風が吹きます。
図より、850hPa面の風向は西風です。
 
次に500hPa面の風向ですが、問題文より500hPa面では南風が吹いています。
 
鉛直方向で風向に違いがあると「温度風」が発生します。温度風とは鉛直方向の風向・風速の違いのことです。「鉛直シア」ともいいます。温度風は実際に吹いている風ではなく、2地点の風ベクトルの差です。温度風の風ベクトルの向きは、下層から上層です。
今回は下層の850hPaが西風、上層の500hPaが南風なので、温度風は南東風になります。北半球では、温度風の右側が高温左側が低温になる性質があります。
よって850hPa面と500hPa面の間の気層の平均気温は、
・東西方向:東側ほど高い
・南北方向:北側ほど高い
ので、(b)と(c)はです。
 
続いて850hPaでの西風と500hPaでの南風の温度移流を考えます。(b)より気温は東側で高いので、西→東に向かって吹く西風では寒気移流になります。同様に、(c)より気温は北側で高いので、南→北に向かって吹く南風では寒気移流になります。よって温度移流は寒気移流になるため、(d)は誤りです。

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