【第50回】学科一般・問題8(2018年8月試験)

大規模な大気の運動におけるエネルギーの変換と熱輸送,水蒸気輸送について述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤について,下記の①~⑤の中から正しいものを一つ選べ。

  1. (a) 発達中の傾圧不安定波では,基本場の水平温度傾度に起因する有効位置エネルギーが減少し,波の運動エネルギーが増大するエネルギーの変換が起きている

  2. (b) 発達中の傾圧不安定波は暖気を極向きに,寒気を赤道向きに輸送しており,いずれも極向きに熱を輸送している

  3. (c) ハドレー循環は,中緯度帯で極向き熱輸送に主要な役割を果たしている。

  4. (d) 亜熱帯高圧帯では蒸発量が降雨量よりも多く,亜熱帯高圧帯で蒸発した水蒸気が熱帯と中緯度帯に向かって輸送されている

(a)のみ誤り
(b)のみ誤り
(c)のみ誤り
(d)のみ誤り
すべて正しい
答え
③ (c)のみ誤り
解説 (a)について
「発達中の傾圧不安定波では,基本場の水平温度傾度に起因する有効位置エネルギーが減少し,波の運動エネルギーが増大するエネルギーの変換が起きている。」

これはです。

傾圧不安定波では、南北の気温差が大きくなることで空気が動きます。

このとき、有効位置エネルギーをエネルギー源として、これを運動エネルギーに変換することで、傾圧不安定波は発達していきます。

例えば上図の場合、「左に寒気、右に暖気」のときは、重心が中心付近にあります。

時間が経って「下に寒気、上に暖気」になったときは、冷たくて重い空気が下にあることで安定するので、重心は中心付近より下に移動します。

下に移動した分のエネルギーが「有効位置エネルギー」です。下に移動するので、有効位置エネルギーは減少しています。

有効位置エネルギーが減少した分だけ、波の運動エネルギーが増大しているので、(a)はになります。

■参考
複数同時発生する竜巻をもたらす温帯低気圧と梅雨前線上の低気圧(栃本英伍,日本風工学会誌)

解説 (b)について
「発達中の傾圧不安定波は暖気を極向きに,寒気を赤道向きに輸送しており,いずれも極向きに熱を輸送している。」

これはです。

大気中の熱の南北輸送量を見ると、北半球では「北向きの熱輸送量」が正、南半球では「北向きの熱輸送量」が負になっています。

一般気象学(小倉義光),p.191

北半球では北向きに熱が輸送され、南半球では南向きに熱が輸送されているので、いずれも極向きに熱を輸送していることがわかります。

解説 (c)について
「ハドレー循環は,中緯度帯で極向き熱輸送に主要な役割を果たしている。」

これはです。

ハドレー循環は、赤道付近で暖められた空気が上昇し、南北30°付近で下降する循環です。

赤道~緯度30°の範囲なので、中緯度帯ではなく低緯度帯の現象です。


解説 (d)について
「亜熱帯高圧帯では蒸発量が降雨量よりも多く,亜熱帯高圧帯で蒸発した水蒸気が熱帯と中緯度帯に向かって輸送されている。」

これはです。

「亜熱帯高圧帯」は緯度30°付近の領域です。下図より、亜熱帯高圧帯では蒸発量降雨量よりも多くなっていることがわかります。

一般気象学(小倉義光),p.175※色は加筆

一方、熱帯と中緯度帯では、降雨量蒸発量を上回っています。

亜熱帯高圧帯で蒸発した水蒸気が熱帯と中緯度帯に運ばれて、熱帯では積乱雲などの雨、中緯度帯では温帯低気圧などの雨に変わっています。

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