【第50回】2018年8月試験

【第50回】学科専門・問題7(2018年8月試験)

図は5 ⽉のある⽇の気象衛星⽔蒸気画像である。この画像に⾒られる現象について述べた次の⽂(a)〜(d)の正誤について,下記の①〜⑤の中から正しいものを⼀つ選べ。

  1. (a) 領域A は,ジェット気流の強⾵軸に沿った暗域と判断できる。

  2. (b) 領域B は,テーパリングクラウドが⾒られることから積乱雲と判断できる。

  3. (c) 領域C は,低気圧が発⽣・発達する時に⾒られるバルジ状の濃密な上層雲と判断できる。

  4. (d) 領域D は,下層⾵の流れの⽅向にほぼ直交する上層雲のトランスバースバンドと判断できる。

(a)のみ正しい
(b)のみ正しい
(c)のみ正しい
(d)のみ正しい
すべて誤り
答え
① (a)のみ正しい
解説 (a)について
「領域A は,ジェット気流の強⾵軸に沿った暗域と判断できる。」

これはです。

水蒸気画像は、対流圏の上・中層の水蒸気量を可視化しています。

一般的に上・中層では、ジェット気流を境にして、極側の空気は冷たく乾燥した空気、赤道側の空気は暖かく湿った空気となっていいます。

水蒸気画像は、乾燥していると「暗域」、湿っている(雲がある)と「明域」として映されるので、ジェット気流がある所では「暗域」と「明域」の境界が見られます

明域と暗域の境界は「バウンダリー」と呼びます。

問題の画像より、領域Aは暗域となっていて、ジェット気流に沿ってできたと判断できます。

■参考
第2章 衛星画像で観測される雲パターンと水蒸気パターン(気象庁)
水蒸気画像の見方について,岸本賢司(日本気象学会)

解説 (b)について
「領域B は,テーパリングクラウドが⾒られることから積乱雲と判断できる。」

これはです。

テーパリングクラウドとは「にんじん状の雲」とも呼ばれている雲です。

上・中層の風上側に向かって、細く毛筆状(にんじん状)になっている雲のことです。

この雲は、積乱雲の雲列と、上層風に流される「かなとこ巻雲」で出来ています。

そのため特に穂先部分では豪雨や突風といった激しい現象が起こりやすいです。

問題の画像より、領域Bは塊状の雲となっていて、にんじん状ではありません。

よって(b)は誤りです。

解説 (c)について
「領域C は,低気圧が発⽣・発達する時に⾒られるバルジ状の濃密な上層雲と判断できる。」

これはです。

低気圧に伴うバルジ状の雲は、寒気側に凸状に膨らみます。

問題の画像より、領域Cは赤道側に凸状となっていて、バルジ状の雲ではありません。

よって(c)は誤りです。

解説 (d)について
「領域D は,下層⾵の流れの⽅向にほぼ直交する上層雲のトランスバースバンドと判断できる。」

これはです。

トランスバースバンドは、「下層⾵の流れの⽅向」ではなく「上層⾵の流れの⽅向」にほぼ直交します。

トランスバースバンド(トランスバースラインとも言う)は、流れの方向に直交する規模の小さい巻雲の列です。

ジェット気流の近くに見られることが多いです。

問題の画像より、領域Dは流れの⽅向にほぼ直交する雲列となっていますが、説明文の「下層⾵の流れ」が間違っているので、(d)は誤りです。

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