【第55回】2021年1月試験

【第55回】学科専門・問題9(2021年1月試験)

 図は,3月のある日の9時の気象衛星画像(可視,赤外,水蒸気)である。図から解析される現象について述べた次の文章の空欄(a)~(c)に入る語句および数値の組み合わせとして適切なものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。

 発達した低気圧が日本海北部と三陸沖にあって,それぞれ北東に進んでいる。日本海北部の低気圧の中心付近には中下層の雲渦がみられ,その北側にはバルジ状の厚い雲域がある。このような状況から,この低気圧は(a)と考えられる。三陸沖の低気圧の中心は北緯41°東経(b)°付近にあり,寒冷前線に対応する対流雲の雲列が南または南西方向へ連なっている。南西諸島から日本の南海上には(c)がみられ,華中方面から日本の南海上にのびる上空の強風軸に対応している。

(a) (b) (c)
すでに閉塞している 143 Ci ストリーク
すでに閉塞している 146 クラウドクラスター
すでに閉塞している 146 Ci ストリーク
まだ閉塞していない 143 クラウドクラスター
まだ閉塞していない 146 Ci ストリーク
答え
③ すでに閉塞している 146 Ci ストリーク
解説 (a)について
「日本海北部の低気圧の中心付近には中下層の雲渦がみられ,その北側にはバルジ状の厚い雲域がある。このような状況から,この低気圧は(a)と考えられる。」

(a)「すでに閉塞している」です。

まず「日本海北部」の場所を確認しておきましょう。「日本海北部」の範囲は以下のように決まっています。

この範囲に低気圧の中心があります。

問題文に「北側にはバルジ状の厚い雲域がある」と書いてあります。

バルジとは、前線による雲が寒気側に膨らむ現象です。赤外画像を見てみると、バルジ状の雲域が確認できます。
赤外画像のバルジ

バルジは暖気移流が強まることで凸状に膨らんでいくので、バルジが見られるとき、低気圧は発達期を迎えています。

次に水蒸気画像に注目すると、低気圧の中心に向かって暗域が見られます。

この暗域はドライスロットと呼ばれていて、乾燥した空気が流入していることを表しています。

低気圧に乾燥した空気が入ると、低気圧はだんだん衰退していきます。

そのため、この段階で、低気圧はすでに閉塞していると考えられます。

■参考
バルジ(気象衛星センター)
衛星画像で観測される雲パターンと水蒸気パターン(気象庁)
水蒸気パターン(気象庁)

解説 (b)について
「三陸沖の低気圧の中心は北緯41°東経(b)°付近にあり,寒冷前線に対応する対流雲の雲列が南または南西方向へ連なっている。」

(b)「146」です。

気象衛星画像から低気圧の中心を求めるとき、注目するのは「フック」です。

フックとは、高気圧性曲率と低気圧性曲率が変わる点のことです。

低気圧の場合、雲域の北縁で高気圧性曲率が増加(バルジ)、雲域の南西縁で低気圧性曲率を示すようになります。

イメージとしては、低気圧性曲率がトラフ、高気圧性曲率がリッジです。

今回の問題では、以下のように低気圧性曲率と高気圧性曲率の雲域が見られます。

衛星画像で見られるフックは、地上低気圧の中心に対応します。そのためフックの緯度・経度がわかれば、それがだいたい地上低気圧の中心位置になります。

今回の問題で緯度・経度を読み取ると、以下のようになります。

フックは東経145°より東側にあるので、選択肢より143°ではなく146°です。

※衛星画像に示されている緯度・経度は把握しておく必要があります。
今回の問題の場合、九州の西の縦線は東経130°、千葉~秋田を通る縦線は東経140°なので、経線は10°ごとに引かれています。
また、九州の南を通る緯線は北緯30°、東北地方を横切る緯線は北緯40°です。
問題文より「三陸沖の低気圧の中心は北緯41°」とあるので、答えを出すためには東経の位置を求めればOKです。
東経140°と東経150°を10分割して求めても良いですが、選択肢が143°と146°なので、東経140°と東経150°を半分にして真ん中の145°より右か左かがわかればOKだと考えました。

■参考
フックパターン(気象衛星センター)
雲パターン(気象庁)

解説 (c)について
「南西諸島から日本の南海上には(c)がみられ,華中方面から日本の南海上にのびる上空の強風軸に対応している。」

(c)「Ci ストリーク」です。

「Ci」は巻雲を表しています。問題から脱線しますが、10種雲形と略称は以下の通りです。

「Ci ストリーク」とは、細長い筋状の巻雲です。

ジェット気流など上層の流れに沿って見られることが多いです。

一方「クラウドクラスター」とは、積乱雲が集まった塊です。

日本では積乱雲が発生・発達しやすい夏の時期に見られることがあります。

今回の問題の赤外画像を見てみると、細長い筋状の雲が見られます。

さらに「3月のある日」の衛星画像であること、「上空の強風軸に対応している」ことから、「Ci ストリーク」だと判断できます。

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