【第55回】2021年1月試験

【第55回】学科専門・問題2(2021年1月試験)

気象庁が⾏っているウィンドプロファイラ観測について述べた次の⽂(a)〜(d)の正誤について,下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。

  1. (a) 地上から上空の5⽅向に向けて電波を発射し,⼤気中の⾵の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波の周波数のずれから,上空の⾵向・⾵速を測定する。

  2. (b) ⾮常に激しい⾬が降っているときは,降⽔粒⼦による散乱が強すぎてそれより上空の観測データが得られない場合がある。

  3. (c) 散乱され上空から戻ってくる電波の強度の鉛直分布から,上空の融解層の存在を判別できる場合がある。

  4. (d) 上空の⼤気が乾燥していると,散乱され戻ってくる電波が弱くなり観測できる⾼度が低くなる傾向がある。

(a)のみ誤り
(b)のみ誤り
(c)のみ誤り
(d)のみ誤り
すべて正しい
答え
⑤ すべて正しい
解説 (a)について
「地上から上空の5⽅向に向けて電波を発射し,⼤気中の⾵の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波の周波数のずれから,上空の⾵向・⾵速を測定する。」

これはです。問題文の通りに測定しています。

ちなみに「戻ってくる電波の周波数のずれ」はドップラー効果といいます。

解説 (b)について
「⾮常に激しい⾬が降っているときは,降⽔粒⼦による散乱が強すぎてそれより上空の観測データが得られない場合がある。」

これはです。

ウィンドプロファイラーの周波数を大きく分類すると,50,400および1300MHz(あるいは900MHz)帯に分けられる(May,1991)。

これらの周波数は波長に換算すると約6m,75cmおよび23cm(33cm)で波長が短いほど雨滴等による減衰が大きくなるため、強い降雨時には観測高度が制限される

(気象研究所技術報告,第35号,「ウインドプロファイラーによる気象の観測法の研究」,5ページ~6ページ)

解説 (c)について
「散乱され上空から戻ってくる電波の強度の鉛直分布から,上空の融解層の存在を判別できる場合がある。」

これはです。

気象レーダーと同様に、ウィンドプロファイラでも融解層の存在を判別できる場合があります。

雨粒と氷粒は電波の反射率が異なります。

融解層(雪が解けはじめて水で覆われている層)では電波の反射率が高くなり、強いエコーが見られるため、融解層だと判別できることがあります。

※「強いエコー」はブライトバンドと呼ばれています。

■参考
400MHz帯ウィンドプロファイラを用いた融解層より上層における粒径分布の推定手法の開発(北村康司ほか、水工学論文集,第50巻,2006年2月)
ウィンドプロファイラデータを用いた融解層の実態把握(山根彩子,水野量)

解説 (d)について
「上空の⼤気が乾燥していると,散乱され戻ってくる電波が弱くなり観測できる⾼度が低くなる傾向がある。」

これはです。

実際のデータを見てみると、空白になっていることがわかります。

気象庁ホームページにも、以下のような記載があります。

ウィンドプロファイラのデータについて
ウィンドプロファイラは大気が乾燥しているとデータを得にくくなります。また、得られたデータが正しいかどうか品質管理を行っています。つまり、データが表示されていないところは大気が乾燥しているか、もしくは品質管理によって正しい風ではないと判断したデータです。(気象庁HP

<参考>
ウィンドプロファイラ(気象庁HP)
加藤ほか,2003:気象庁におけるウィンドプロファイラ観測業務,天気
橋口,2009:風のリモートセンシング技術(2) ウィンドプロファイラー,日本風工学会誌
坂井ほか,1995:ウィンドプロファイラーによる観測結果,気象研究所技術報告

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