【第55回】2021年1月試験

【第55回】学科一般・問題3(2021年1月試験)

 ⼤気の法則や関係式の組み合わせに関する次の⽂章の空欄(a),(b)に⼊る語句の組み合わせとして適切なものを,下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

 ⼒学や熱⼒学の法則や関係式を組み合わせることにより,気象に関する物理量の重要な関係を導くことができる。たとえば,熱⼒学第⼀法則と静⼒学平衡の式などを組み合わせることによって(a)を導くことができる。また,温度⾵の関係は,地衡⾵平衡と(b)を組み合わせることにより導くことができる。

  (a) (b)
乾燥断熱減率 静⼒学平衡の式
乾燥断熱減率 ⾓運動量保存則
⼤気の状態⽅程式 静⼒学平衡の式
⼤気の状態⽅程式 ⾓運動量保存則
連続の式 静⼒学平衡の式
答え
① 乾燥断熱減率 静⼒学平衡の式
解説 (a)に関する知識

まずは「乾燥断熱減率」「⼤気の状態⽅程式」「連続の式」について簡単に説明します。

乾燥断熱減率

乾燥空気を断熱的に変化させたとき、温度が下がっていく割合

⼤気の状態⽅程式

PV=nRT」を基本形として、大気の圧力・体積・物質量(mol)・温度の関係を1つの数式にまとめたもの

連続の式

ある空間における空気の質量の変化は、密度の時間変化に等しく、運動によっては変化しない。質量保存則の考え。

次に、熱⼒学第⼀法則静⼒学平衡の式をおさらいしましょう。

熱⼒学第⼀法則

熱⼒学第⼀法則とは「ある物体に熱(Q)を加えたとき、その物体がどれだけ仕事(W)をして、どれだけ温度が上がるのか(ΔU)を決める法則」です。

「温度の変化」は「内部エネルギーの変化」と言い換えることができます。

静⼒学平衡の式

静⼒学平衡とは「重力による下向きの力と鉛直方向の圧力傾度が釣り合っている状態」のことです。

静⼒学平衡の式は以下のように求められます。

■参考
連続の式(東京学芸大学気象学研究室)

解説 (a)について
熱⼒学第⼀法則静⼒学平衡の式などを組み合わせることによって(a)を導くことができる」

選択肢より(a)に入るのは「乾燥断熱減率」「⼤気の状態⽅程式」「連続の式」のどれかですが、答えは「乾燥断熱減率」です。

まず「⼤気の状態⽅程式」の「PV=nRT」ですが、これは「ボイル・シャルルの法則」と「アボガドロの法則」を組み合わせて導く式です。

「PV=nRT」を導くときに熱のやり取りは関係ないので、「熱⼒学第⼀法則」から導かれることはないかな、と思えたらOKです。

続いて「連続の式」です。連続の式のイメージは下図です。

「連続の式」を求めるときも熱のやり取りは関係ないので、「熱⼒学第⼀法則」から導かれることはないかな、と思えたらOKです。

最後に、熱⼒学第⼀法則静⼒学平衡の式を組み合わせることで「乾燥断熱減率」が導かれるのか、確認します。


「ΔT/ ΔZ = g/ C」で表された式が乾燥断熱減率です。

空気が断熱的に上昇(ΔZ)すると、周囲の気圧が低くなって空気は膨張します。

膨張に要する仕事は、空気の温度を下げて(ΔT)内部エネルギーを消費することで補います。

その温度が下がる割合が乾燥断熱減率で、「ΔT/ ΔZ = g/ C」で表されています。

解説 (b)について
「温度⾵の関係は,地衡⾵平衡と(b)を組み合わせることにより導くことができる。」

選択肢より(b)に入るのは「静⼒学平衡の式」「⾓運動量保存則」のどちらかですが、答えは「静⼒学平衡の式」です。

温度風とは、「地衡風の鉛直方向の風向・風速の違い(=鉛直シア)」です。

地球には暖気と寒気があり、暖気と寒気の間には気圧傾度力が生じます。

気圧傾度力が生じると地衡風が吹きますが、地衡風は上空に行けば行くほど風速が大きくなります。

このときの上空と下層の風速差が「温度風」です。

ここで、「静⼒学平衡の式」は「気圧傾度力と重力が釣り合った式」なので、気圧傾度力が関わっています。

よって温度⾵の関係は、地衡⾵平衡と静⼒学平衡の式を組み合わせることにより導くことができます。

詳しくはこちらをご覧ください。

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