【第54回】2020年8月試験

【第54回】学科一般・問題9(2020年8月試験)

台風について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

  1. (a) 台風は,積雲対流によって放出される潜熱をエネルギー源として発達するとともに,そのエネルギー源により勢力が維持される。

  2. (b) 最盛期の台風の中心付近の中上層には,周辺より気温の高い暖気核が存在する。

  3. (c) 各高度における台風の最大風速は,一般的には,地表面から対流圏界面まで高さとともに増大する。

  (a) (b) (c)
答え
③ 正 正 誤
解説 (a)について
「台風は,積雲対流によって放出される潜熱をエネルギー源として発達するとともに,そのエネルギー源により勢力が維持される。」

これはです。

熱帯の海上にある程度発達した低気圧があるとき、低気圧に向かって反時計回りに風が吹き込みます。

このとき、海上にある空気が吹き込むため、この空気には水蒸気がたくさん含まれています

低気圧の中心に集まった湿潤な空気は、強制的に上昇気流になります。

水蒸気をたくさん含んだ空気が上空に持ち上がるので、すぐに凝結が始まり、雲粒や雨粒を生成します。

凝結に伴って潜熱が放出され、台風中心部の上空の空気は暖められて軽くなります。

すると中心付近の気圧が低下し、台風中心へ向かう空気の流れが強まって、台風は発達・維持されます。

CISKのしくみ

(図解 台風の科学(上野充,山口宗彦)p.83)

※CISK…「第二種条件付き不安定」。台風発達に関する概念。大きなスケールの"台風"と、比較的小さなスケールの"積乱雲"が、互いに相手の活動を強めながら発達していく、という考え。

解説 (b)について
「最盛期の台風の中心付近の中上層には,周辺より気温の高い暖気核が存在する。」

これはです。

飛行機観測で得られたハリケーンの気温分布を見てみると、以下のようになります。

台風の暖気核

(図解 台風の科学(上野充,山口宗彦)p.50)

台風の中心付近の中上層では、平均的な気温より10℃以上も気温が高くなっています。

解説 (c)について
「各高度における台風の最大風速は,一般的には,地表面から対流圏界面まで高さとともに増大する。」

これはです。

台風の最大風速は、高度2~4kmあたりが最も強いです。

そのため「地表面から対流圏界面まで高さとともに増大する」は誤りです。

接線風速の鉛直断面図

(図解 台風の科学(上野充,山口宗彦)p.45)

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