【第55回】2021年1月試験

【第55回】学科専門・問題11(2021年1月試験)

 ⽇本付近の⻯巻に関する次の⽂(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

  1. (a) ⻯巻のろうと雲は,気圧の低い⻯巻渦の中⼼付近に空気塊が吹き込むとともに,断熱膨張により気温が低下して⽔蒸気が凝結することにより形成される。

  2. (b) ⻯巻の地⾯近くの部分では,⾵が渦の中⼼に向かって吹き込むため,北半球中緯度に位置する⽇本付近ではコリオリの⼒により常に反時計回りの渦となっている。

  3. (c) ⻯巻の被害域は,⼀般的に幅は数⼗mから数百mで⻑さは数kmの範囲に集中するが,⻑さが数⼗kmに達することもある。

  4. (d) 気象庁が⻯巻の突⾵の強さ(⾵速)の評定に⽤いている⽇本版改良藤⽥スケール(JEFスケール)は,0から5まで6階級あり,数字が⼤きくなるに従って⾵速は⼤きくなる。

(a) (b) (c) (d)
答え
② 正 誤 正 正
解説 (a)について
「⻯巻のろうと雲は,気圧の低い⻯巻渦の中⼼付近に空気塊が吹き込むとともに,断熱膨張により気温が低下して⽔蒸気が凝結することにより形成される。」

これはです。

竜巻は「積乱雲や積雲が作り出す鉛直軸を持つ激しい渦」です。

竜巻の特徴の一つが「ろうと状や柱状の雲を伴っていること」で、この雲のことを「ろうと雲」と呼びます。

ここで、一般的に雲が発生する過程を考えると、

  1. 水蒸気を含む空気塊が上空に持ち上がる
  2. 周囲の気圧が下がるにつれて、空気塊は断熱膨張する
  3. 断熱膨張することで、空気塊の温度が下がる
  4. 空気塊の温度が下がると、いずれ飽和に達しする
  5. 水蒸気が凝結して微細な水滴(雲粒)になる

となります。

次にろうと雲を考えます。

竜巻は激しい渦なので、外向きに遠心力が働きます。

そのため中心付近の空気は外向きに飛ばされて、渦の中心の気圧は低くなります。

渦があるので、中心に向かって空気塊が吹き込みますが、渦の中心の気圧は低いので空気塊は断熱膨張します。

空気塊が断熱膨張する→温度が下がる→飽和に達する→水蒸気が凝結→雲発生、という流れでろうと雲が発生します。

(一般的な雲は、上空に持ち上げられることで気圧が下がって発生しますが、ろうと雲は水平方向で気圧が下がっています。)

■参考
竜巻 とその親雲の流体力学(新野宏)
竜巻のはなし(福岡管区気象台)
【インタビュー】秋から冬の「危険な雲」(ウェザーニューズ)

解説 (b)について
「⻯巻の地⾯近くの部分では,⾵が渦の中⼼に向かって吹き込むため,北半球中緯度に位置する⽇本付近ではコリオリの⼒により常に反時計回りの渦となっている。」

これはです。

日本の竜巻は反時計回りの渦だけでなく、時計回りの渦もあります。

北半球だとコリオリ力の影響を受けて反時計回りの渦ができやすいですが、竜巻は小さい渦のためコリオリ力の影響が小さく、時計回りの渦が発生することもあります。

■参考
Q5.回転は時計回り、反時計回り?(福岡管区気象台)
時計回りの巨大竜巻、マレーシア・ペナン島を直撃(Yahoo記事)

解説 (c)について
「⻯巻の被害域は,⼀般的に幅は数⼗mから数百mで⻑さは数kmの範囲に集中するが,⻑さが数⼗kmに達することもある。」

これはです。

例えば2014年8月10日に栃木県栃木市で発生した竜巻では、被害域長さが15kmだったと報告されています。(気象庁HP

解説 (d)について
「気象庁が⻯巻の突⾵の強さ(⾵速)の評定に⽤いている⽇本版改良藤⽥スケール(JEFスケール)は,0から5まで6階級あり,数字が⼤きくなるに従って⾵速は⼤きくなる。」

これはです。

突風が起きたとき、風速の強さを決める方法として「藤田スケール」が世界で広く使われています。

「藤田スケール」はアメリカ基準で作られたため、気象庁は日本用に改良した「日本版改良藤田スケール(JEFスケール)」を利用しています。

「藤田スケール」はF0~F5の6段階、「日本版改良藤田スケール(JEFスケール)」はJEF0~JEFF5の6段階で階級を表し、F0/JEF0よりもF5/JEF5のほうが⾵速は⼤きいです。

■参考
竜巻ポータルサイト(気象庁)
竜巻等の突風データベース(気象庁)
竜巻などの激しい突風とは(気象庁)
日本版改良藤田(JEF)スケールとは(気象庁)

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