【第50回】2018年8月試験

【第50回】学科一般・問題4(2018年8月試験)

降⽔過程におけるエーロゾルの役割に関する次の⽂(a)〜(c)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から⼀つ選べ。

  1. (a) エーロゾルを含まない清浄な空気中では,相対湿度が101%になっても⽔滴は形成されない。これは,⼩さな⽔滴が平衡状態として存在するために必要な過飽和度が1%よりも⾼いからである。

  2. (b) ⽔溶性のエーロゾルの働きによって⼤気中に発⽣した⽔滴は,溶解した物質の効果により相対湿度が100%に達しなくとも⽔滴として存在できる

  3. (c) ⼤陸上の積雲は,⼀般に海洋上の積雲に⽐べて単位体積あたりの雲粒の数が多く,かつ雲粒の平均的な⼤きさは⼩さい。これは,凝結核として働く単位体積あたりのエーロゾルの数が,⼤陸上の⽅が海洋上に⽐べて多いことによる。

(a) (b) (c)
答え
① 正 正 正
解説 (a)について
「エーロゾルを含まない清浄な空気中では,相対湿度が101%になっても⽔滴は形成されない。これは,⼩さな⽔滴が平衡状態として存在するために必要な過飽和度が1%よりも⾼いからである。」

これはです。

エーロゾルを含まない清浄な空気の場合、水蒸気はなかなか凝結することができず、相対湿度が101%(過飽和度1%)になっても⽔滴は形成されません。

「平衡状態にある水滴の大きさ」と「過飽和度(相対湿度)」の関係は、以下のグラフのように決まっています。

平面の水に対して(不安定な)平衡状態にある純粋な水の水滴の半径と相対湿度および過飽和度の関係
(一般気象学(81ページ図4.2)(小倉義光) ※青は加筆)

半径0.01μm の水滴は、相対湿度112%(過飽和度12%)のときに、はじめて平衡状態になることができます。

過飽和度が12%より低いと、水滴は蒸発して水蒸気に戻ってしまいます。

水滴の半径が0.1~0.2μmのとき、過飽和度1%で平衡状態になれますが、水蒸気が偶然の衝突を繰り返して「半径0.1~0.2μmの水滴」になるのは難しいです。

よって、⼩さな⽔滴が平衡状態として存在するために必要な過飽和度は、1%よりも高いです。

水滴の生成について

⽔滴が形成されるためには、過飽和度がどんどん大きくなって、水蒸気同士が衝突する必要があります。

ただし、水蒸気同士が衝突して水滴が形成されても、その水滴はとても小さいです。

水滴が小さいほど、水滴の表面張力は大きくなるため、他の水蒸気や水滴をはじいてしまい、形成された水滴は大きく成長することはできません。

そのうち、形成された小さな水滴は、蒸発して水蒸気に戻ってしまいます。

(過飽和や表面張力について、詳しくはこちらをご覧ください。)

解説 (b)について
「⽔溶性のエーロゾルの働きによって⼤気中に発⽣した⽔滴は,溶解した物質の効果により相対湿度が100%に達しなくとも⽔滴として存在できる。」

これはです。

水に溶けやすいエーロゾルによって発生した水滴は、純粋な水と比べて飽和水蒸気圧が低くなります

例えば塩化ナトリウム(NaCl)がエーロゾルになるとき、水分子とNaClが結び付くため、純粋な水より蒸発しづらくなります。

塩化ナトリウム(NaCl)の場合、相対湿度76%以上であれば⽔滴として存在できます。

解説 (c)について
「⼤陸上の積雲は,⼀般に海洋上の積雲に⽐べて単位体積あたりの雲粒の数が多く,かつ雲粒の平均的な⼤きさは⼩さい。これは,凝結核として働く単位体積あたりのエーロゾルの数が,⼤陸上の⽅が海洋上に⽐べて多いことによる。」

これはです。エーロゾルの数は「⼤陸上 > 海洋上」です。

エアロゾル年平均降下量(gm-2yr-1)(Jickells et al., 2005 を改造)
(国立研究開発法人海洋研究開発機構HP)

大陸上のエーロゾルは、サハラ砂漠や森林火災・焼き畑が起源となっているものが多くあります。

他にも黄砂や産業起源のエーロゾル、火山噴火によるエーロゾルもあります。

それらを合わせると、海塩などの海洋上のエーロゾルよりも、大陸上のエーロゾルのほうが多くなります。

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