【第55回】2021年1月試験

【第55回】学科専門・問題8(2021年1月試験)

北半球の発達中の低気圧に伴う前線の⼀般的な特徴について述べた次の⽂(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

  1. (a) 温暖前線では,寒気の上を暖気が滑昇しており,寒気と暖気の間には鉛直⽅向に成層が不安定な転移層が⾒られる。

  2. (b) 地上天気図では,寒冷前線の転移層が地表⾯と交わる寒気側の境界を寒冷前線とする。

  3. (c) 温暖前線⾯の傾きは寒冷前線⾯より緩やかで気塊がゆっくり上昇するので,温暖前線⾯上では層状の雲が形成されやすい。

  4. (d) 温暖前線のすぐ北側にある地点では,⾼度があがるとともに⾵向は時計回りに変化している。

(a) (b) (c) (d)
答え
④ 誤 誤 正 正
解説 (a)について
「温暖前線では,寒気の上を暖気が滑昇しており,寒気と暖気の間には鉛直⽅向に成層が不安定な転移層が⾒られる。」

これはです。

「成層が不安定な転移層」ではなく「成層が安定な転移層」です。

温暖前線を横から見ると以下のようになります。
温暖前線の構造

  • 前線帯:暖気と寒気の境界。温度傾度が大きくなっている領域。
  • 転移層:鉛直方向に見たとき、前線帯に対応する層。
  • 前線:前線帯の暖気側の境界。
  • 温暖前線:暖気の勢力が強い前線。
  • 寒冷前線:寒気の勢力が強い前線。

転移層に注目すると、転移層の上には暖気、転移層の下には寒気があります。

下層に冷たい空気があるほうが大気は安定するので、「成層が安定な転移層」になります。

■参考
天気予報セミナーのまとめ(学芸大学)

解説 (b)について
「地上天気図では,寒冷前線の転移層が地表⾯と交わる寒気側の境界を寒冷前線とする。」

これはです。

寒気側の境界」ではなく「暖気側の境界」です。

前線の定義は「前線帯の暖気側の前面が地表⾯と交わるところ」です。

温暖前線・寒冷前線どちらの場合でも、「暖気側の境界」です。

解説 (c)について
「温暖前線⾯の傾きは寒冷前線⾯より緩やかで気塊がゆっくり上昇するので,温暖前線⾯上では層状の雲が形成されやすい。」

これはです。

温暖前線⾯では空気がゆっくり上昇するので、横に広がる層状の雲が発生しやすいです。

一方、寒冷前線⾯は傾きが急なので、空気が上に上に持ち上げられて、積乱雲など対流性の雲が発生しやすいです。

解説 (d)について
「温暖前線のすぐ北側にある地点では,⾼度があがるとともに⾵向は時計回りに変化している。」

これはです。

温暖前線の北側には寒気、南側には暖気があります。

温暖前線のすぐ北側にある地点では、暖気から寒気に向かう「暖気移流」があります。

温度風と温度移流の関係より、⾼度があがるとともに⾵向が時計回りに変化する場合は「暖気移流」となっています。

よって(d)の文章は正しいです。

<< 前の問題

次の問題 >>

-【第55回】2021年1月試験
-