【第50回】2018年8月試験

【第50回】学科一般・問題1(2018年8月試験)

 ⼤気の鉛直⽅向の各層について述べた次の⽂(a)〜(d)の正誤について,下記の①〜⑤の中から正しいものを⼀つ選べ。

  1. (a) 対流圏では,気温の平均的な鉛直分布は対流による熱輸送によりほぼ決まっている。

  2. (b) 成層圏では,酸素分⼦が紫外線を吸収し光解離により酸素原⼦となり,この酸素原⼦が別の酸素分⼦と結合してオゾンが⽣成されている。

  3. (c) 中間圏では,気温は⾼度とともに低下し,中間圏界⾯で極⼩となっている。

  4. (d) 熱圏では,窒素や酸素などの原⼦や分⼦が波⻑の短い紫外線やX線等を吸収し,光電離により電⼦を放出してイオン化している。

(a)のみ誤り
(b)のみ誤り
(c)のみ誤り
(d)のみ誤り
すべて正しい
答え
① (a)のみ誤り
解説 (a)について
「対流圏では,気温の平均的な鉛直分布は対流による熱輸送によりほぼ決まっている。」

これはです。

対流圏の気温の鉛直分布は「対流による熱輸送」だけでなく、放射の効果も影響します。

対流圏内の場合、「実際の大気(観測で求められた標準大気)」は「放射と対流の影響を加味した大気(放射対流平衡)」と、ほぼ同じであることがわかります。

そして「放射の影響のみを加味した大気(放射平衡)」とは異なっています。

よって対流圏での気温の鉛直分布には対流と放射が関係しているとわかります。

解説 (b)について
「成層圏では,酸素分⼦が紫外線を吸収し光解離により酸素原⼦となり,この酸素原⼦が別の酸素分⼦と結合してオゾンが⽣成されている。」

これはです。

成層圏にはオゾン層が存在します。オゾンの作られ方は問題文の通りです。

詳しくは気象庁HPに載っていますが、図で説明すると以下のようになります。

①酸素分⼦が紫外線を吸収すると、光解離により酸素原⼦になる。
②①の酸素原子が他の酸素分子と結合してオゾンが生成される。
③オゾンは酸素原子と反応して2つの酸素分子に変化し、消滅する。

自然界のオゾンは①~③のプロセスによって生成と消滅のバランスがとれて、濃度が保たれています。

解説 (c)について
「中間圏では,気温は⾼度とともに低下し,中間圏界⾯で極⼩となっている。」

これはです。

下図の通り、気温は中間圏界⾯で極⼩となっています。

(秋田地方気象台)

解説 (d)について
「熱圏では,窒素や酸素などの原⼦や分⼦が波⻑の短い紫外線やX線等を吸収し,光電離により電⼦を放出してイオン化している。」

これはです。

問題文の通り、熱圏では光電離(こうでんり)が起きています。

熱圏は太陽に近いため紫外線がダイレクトに降り注ぎます。そのうち0.1μm以下の波⻑の短い紫外線は、窒素や酸素の原⼦・分⼦に吸収されます。

そして紫外線の作用によって、窒素や酸素の原⼦・分⼦から「電子」が分離します。これが光電離です。

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