凝結核のまわりにできた小さな水滴は、まわりの水蒸気を取りこんで大きくなります。これを凝結過程(凝結成長)といいます。この記事では、凝結による成長の速さを表す式を読み解き、凝結だけでは雨粒になりにくい理由を説明します。
この記事のポイント
- 凝結による半径の成長速度は dr/dt=(D/r)(ρv/ρw)×過飽和度 で表され、半径 r に反比例します。
- 小さい水滴ほど速く育つので、凝結成長では水滴の大きさがそろっていきます。
- 大きくなるほど成長が遅くなるため、凝結だけでは雨粒の大きさまでなかなか育ちません。
凝結成長のしくみ
過飽和の空気の中では、水滴の表面近くより、遠くのほうが水蒸気が多い状態になります。水蒸気は多い所から少ない所へ広がっていく(拡散する)ので、まわりの水蒸気が水滴の表面に向かって集まり、凝結します。こうして水滴は少しずつ大きくなります。
成長の速さを表す式
水滴の質量が増える割合は、水滴の半径と過飽和度に比例することが知られています。水滴の質量は (4/3)πr³ρw なので、これを半径の増え方に直すと、次の式になります。
dr/dt = (D/r) × (ρv/ρw) × 過飽和度
- dr/dt:半径 r が大きくなる速さ(単位時間あたりの半径の増加量)
- D:水蒸気の拡散係数(水蒸気の広がりやすさ)
- r:水滴の半径
- ρv:まわりの空気の水蒸気密度
- ρw:水(液体)の密度
- 過飽和度:ここでは%ではなく割合(1%なら0.01)で入れます
この式には、3のような係数は付きません。古い説明で係数が付いているものを見かけたら注意しましょう。なお、この式は凝結のときに出る熱(潜熱)の影響などを省いた、簡単な形です。

式から分かること
式の右辺には 1/r があります。つまり、半径が小さい水滴ほど速く大きくなり、大きくなるほど成長は遅くなります。また、過飽和度が大きいほど速く成長します。
式の両辺に r をかけると、r×(dr/dt) が一定になります。これは、半径の2乗が時間に比例して増えることを意味します。半径を10倍にするには、およそ100倍の時間がかかる計算です。成長がどんどん遅くなることが、式からも分かります。
ちがう大きさの2つの水滴を考えてみましょう。はじめ小さい水滴は速く育ち、はじめ大きい水滴はゆっくり育ちます。そのため、時間がたつと2つの半径の差は小さくなります。凝結成長では、水滴の大きさがそろっていくのが特徴です。

溶質効果:凝結核があると育ちやすい
凝結核に海塩などの溶けやすい物質がふくまれていると、水滴は食塩水になります。水面の一部を溶けた物質が占めるので、飛び出せる水分子が減ります。その結果、水滴に対する飽和水蒸気圧が下がります。これを溶質効果といいます。
小さい水滴ほど飽和水蒸気圧が高くなる曲率効果とは、逆向きの働きです。溶質効果のおかげで、凝結核をふくむ水滴は、低い過飽和度でも成長を始められます。

凝結だけでは雨粒にならない
雲粒の半径は約10μm、ふつうの雨粒の半径は約1mmで、雨粒は雲粒の約100倍の大きさです。体積でいうと約100万倍なので、雨粒1個は雲粒約100万個分の水でできています。
凝結成長は、雲粒くらいの大きさまでは比較的速く進みます。しかし、大きくなるほど成長が遅くなるため、凝結だけで雨粒の大きさまで育てようとすると、非常に長い時間がかかってしまいます。実際の雲は、できてから1時間ほどで雨を降らせることもあります。
また、凝結成長では水滴の大きさがそろってしまうので、落ちる速さの差も生まれにくくなります。そこで、雨粒ができるには別のしくみが必要です。それが、水滴どうしがぶつかってくっつく併合過程と、氷の粒が成長する氷晶過程です。
まとめ
- 凝結成長は、まわりの水蒸気が拡散して水滴の表面に集まり、凝結することで進みます。
- 成長の速さは dr/dt=(D/r)(ρv/ρw)×過飽和度 で、半径 r に反比例します(係数3は付きません)。
- 小さい水滴ほど速く育つので、水滴の大きさはそろっていきます。
- 溶質効果により、凝結核をふくむ水滴は低い過飽和度でも成長できます。
- 大きくなるほど成長が遅くなるため、凝結だけでは雨粒になりにくく、併合過程などが必要です。
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わかりやすい説明ありがとうございます。
小倉先生の教科書では、
dr/dt=D/r x Pv/Pw x 過飽和度
となっており、”3”はどこいった?計算間違いしたのか?と困惑しました。
どちらにしても、雲粒と半径の関係は定性的には理解できるので、問題ないと言えばそうなんですが、、、、。半径の1/3反比例するという理解でいいですか?
コメントありがとうございます。
私も小倉先生の一般気象学で、”3”が無くなっていたことに疑問を持っていたため、本記事では3を残しています。
今回の式は、
dr/dt = (3D) × (1/r) × (Pv/Pw) × (過飽和度)
と理解しています。
Dは拡散係数で、圧力や温度によって変わるようなので、(3D)とまとめて係数扱いにしております。
「(dr/dt)がrに反比例する」=「水滴の半径が小さいほど、単位時間あたりで半径が増大する割合が大きい」
ということが分かっていれば良いと思います。
五十嵐様
以前いただいたご質問について、訂正のご連絡です。改めて計算を確認したところ、式の「3」は私の計算ミスでした。
M=(4/3)πr³ρw を時間で微分すると 4πr²ρw×(dr/dt) となり、これを dM/dt=4πrDρv×(過飽和度) と等しいとおくと、
dr/dt = (D/r) × (ρv/ρw) × (過飽和度)
となって、小倉先生の一般気象学の式のとおり「3」は付きません。ご指摘いただいたとおりでした。前回の返信で誤った説明をしてしまい、申し訳ありませんでした。本文の図も修正しました。
なお、「dr/dt が半径 r に反比例する(小さい水滴ほど半径が速く大きくなる)」という結論は変わりません。貴重なご指摘をありがとうございました。