問題
気象庁のアンサンブル予報について、各メンバーの精度、スプレッドと信頼度、アンサンブル平均の性質、摂動の与え方を述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選択する問題です。
(a) アンサンブル予報の各メンバーそれぞれの予測精度は、統計的には、摂動を加えていないコントロールランの予測精度より劣る。
(b) アンサンブル予報のスプレッドが大きい場合は、小さい場合に比べて予報の不確実性は小さく、予報の信頼度が高いと考えられる。
(c) アンサンブル平均された予報結果は、各予報要素間で物理的に整合した値とはなっていない。
(d) アンサンブル予報では、数値予報の不確実性を推定するため、初期値だけでなく、境界値や数値予報モデルのパラメータに揺らぎを与えたり、あるいはこれらを組み合わせたりすることで、複数の予測を行っている。
| 選択肢 | (a) | (b) | (c) | (d) |
|---|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 誤 | 誤 |
| ② | 正 | 誤 | 正 | 正 |
| ③ | 正 | 誤 | 誤 | 正 |
| ④ | 誤 | 正 | 正 | 正 |
| ⑤ | 誤 | 誤 | 誤 | 誤 |
答え
答えを見る
② a:正 b:誤 c:正 d:正
解説
解説を見る
(a)について
この記述は正しいです。コントロールランは、最も確からしいと考えられる解析値(摂動なし)から出発した予測です。各メンバーは、そこに解析誤差程度の摂動を加えた初期値から出発するため、個々のメンバーの予測精度は、統計的にはコントロールランより劣ります。ただし、多数のメンバーを平均したアンサンブル平均は、予測の不確実な部分が平滑化されるため、統計的にコントロールランより精度が高くなります。
(b)について
この記述は誤りです。スプレッドはメンバー間の予測のばらつきの大きさです。スプレッドが大きいということは、初期値などのわずかな違いで予測結果が大きく異なることを意味し、予報の不確実性は大きく、信頼度は低いと考えられます。記述は逆になっています。
(c)について
この記述は正しいです。アンサンブル平均は、各要素・各格子点ごとに単純に平均した値であり、物理法則に従って時間発展させた結果ではありません。このため、例えば気圧(高度)場の平均と風の平均が地衡風の関係を満たすとは限らないなど、各予報要素間で物理的に整合した値とはなっていません。また、平均することで低気圧などの擾乱が実際より弱く表現されることにも注意が必要です。
(d)について
この記述は正しいです。数値予報の誤差の原因は、初期値の誤差だけでなく、数値予報モデル自体の不完全さや境界条件(海面水温など)の誤差にもあります。気象庁の全球アンサンブル予報システムでは、初期値の摂動に加え、物理過程の不確実性を表現するモデルアンサンブル手法や、海面水温の摂動などを組み合わせて、複数の予測を行っています。
おすすめの参考書
学科専門の観測・予報技術を体系的に確認したいときは、次の2冊が役立ちます。
本記事に掲載している試験問題は、「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て使用しています。
解説は当サイト運営者が独自に作成したものであり、同センターとは一切関係ございません。
なお、本記事の内容に基づいて生じた損害等について、当サイトは責任を負いかねますのでご了承ください。

