【第64回】実技1・問題1(2025年8月試験)

問題

XX年8月8日から9日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する問題です。8日21時に九州南部に上陸した台風第AA号(中心気圧988hPa)が主役で、関東の東には台風第BB号もあります。台風第AA号は日本海へ進みながら温帯低気圧に変わる見込みです。予想図の初期時刻は、図13の鉛直流を除き、いずれも8月8日21時(12UTC)です。問1では、図1(地上天気図)、図2(気象衛星赤外画像)、図3(500hPa解析図、850hPa・700hPa解析図)を用いて、8日21時の気象概況、ジェット気流と上層トラフの位置、温帯低気圧化しつつある台風の構造を読み取ります。

第64回実技1 図1 地上天気図と図2 気象衛星赤外画像(8日21時)
第64回実技1 図3 500hPa高度・渦度解析図と850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図(8日21時)

(1) 気象概況の穴埋め

8日21時の日本付近の気象概況について述べた文章の空欄①〜⑧を埋めます(①は台風の強さ、③は16方位、⑤は漢字、⑥は枠内から選択。①は強さを表現しない場合は「−」)。

図1によると、九州南部には中心気圧988hPaの(①)台風第AA号があって、(②)ノットの速さで(③)に進んでいる。この台風は今後24時間以内に温帯低気圧に変わる見込みで、最大風速は今後24時間以内に(④)ノットに達すると予想され、(⑤)警報が発表されている。一方、関東の東にも中心気圧980hPaの台風第BB号がある。
台風第AA号に近い鹿児島では(⑥)しゅう雨を観測し、台風第AA号の北西に位置するチェジュ島の天気は(⑦)となっている。また、名瀬の現在天気によると、名瀬では観測前(⑧)時間以内に雨があったが観測時には止んでいる。

⑥の選択肢:弱い/並又は強い/激しい

(2) ジェット気流と上層トラフ

図2を用いて、①8日21時に朝鮮半島付近から千島近海にかけて解析されているジェット気流(200〜300hPa付近)の東経130°線上での位置を雲の分布から推定し、その緯度を1°刻みで答え、根拠を30字程度で述べます。②雲の分布から推定される上層トラフの位置を{ボッ海付近、朝鮮半島西岸付近、朝鮮半島東岸付近、日本海中部}から選びます。

(3) 典型的な台風の構造と異なる点

図1〜3を用いて、台風中心から概ね400kmの範囲内における気象衛星赤外画像、700hPa鉛直流、850hPa気温の特徴のうち、典型的な台風の構造と異なる点を、数値は用いずに、それぞれ35字、45字、35字程度で述べます(中心から概ね100km以内は「中心付近」、それ以外は8方位で「北側」「北〜南東側」等と表現)。

(4) 500hPaの渦度

図1と図3を用いて、台風第AA号に対応する500hPa面の渦度の極大値を正負の符号と単位を付けて答え、地上の台風中心から見た極大点の方向を8方位で答えます(距離が100km未満なら「真上」)。

答え

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(1)

空欄答え空欄答え
①−⑤海上暴風
②21⑥弱い
③東北東⑦晴れ
④50⑧1

(2)

① 北緯43°(42、44)
根拠:台風の北にある雲域の北縁に見られるCiストリーク(細長い筋状の上層雲)があるため。

② 朝鮮半島西岸付近

(3)

気象衛星赤外画像:発達した対流雲域は中心付近と北〜東側に偏り、その他の領域にはほぼない。
700hPa鉛直流:上昇流の極大点は中心付近ではなく北東側にあり、南西〜北西側は主に下降流となっている。
850hPa気温:高温域は中心付近ではなく東側にあり、西〜北側には低温域が見られる。

(4)

渦度の極大値:+195×10−6/s、極大点の方向:北西

( )内は別解として認められている値です。

解説

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(1) 台風の英文情報と天気記号を読む

  • ①:英文の冒頭はTS(Tropical Storm)で、MAX WINDS 40 KTです。強さの階級は最大風速64ノット以上で「強い」なので、40ノットでは強さを表現しません(−)。
  • ②③:ENE 21 KTは、東北東へ21ノットで進んでいることを表します。
  • ④:EXPECTED MAX WINDS 50 KT WITHIN NEXT 24 HOURSから、24時間以内に最大風速50ノットに達する予想です。
  • ⑤:台風の周囲の[SW]は海上暴風警報(48ノット以上64ノット未満)です。なお[GW]は海上強風警報、[TW]は海上台風警報です。
  • ⑥:鹿児島の現在天気は、▽(しゅう雨)の上に●が1つの記号で、弱いしゅう雨を表します(並又は強いは●が2つ、激しいは3つ重なります)。
  • ⑦:チェジュ島には現在天気の記号がなく、全雲量の記号は円の3/4程度が塗られた状態(雲量7〜8)です。雲量2〜8で降水などがなければ天気は晴れです。
  • ⑧:名瀬の現在天気は●の右に「]」が付いた記号で、「観測前1時間内に雨があったが、観測時には止んでいる」ことを表します。

(2) 雲の分布からジェット気流とトラフを推定する

図2では、九州付近の台風の雲域から北東へ、朝鮮半島北部〜日本海〜北海道方面にかけて上層雲がのびています。この雲域の北縁には、ジェット気流に沿って流れる細長い筋状の上層雲(Ciストリーク)が見られ、北縁が直線的にくっきりしています。ジェット気流の軸は、このような上層雲域の北縁(寒気側の縁)付近にあたるので、東経130°線上で北縁を読むと北緯43°付近と推定できます。

上層トラフの前面(東側)では南西風に伴う上昇流で雲が広がり、後面(西側)では下降流で雲がなくなります。図2では雲域の西縁がおおむね朝鮮半島の西岸に沿っており、黄海側は雲が少ないことから、トラフは朝鮮半島西岸付近にあると推定できます。図3(上)の500hPa高度場で、朝鮮半島の西にトラフ(等高度線の南への張り出し)があることとも整合します。

(3) 温帯低気圧化しつつある台風の構造

典型的な台風は、発達した対流雲が中心を取り巻いて軸対称に分布し、中心付近の壁雲で強い上昇流、中心付近が周囲より高温の暖気核をもつ構造です。温帯低気圧に変わりつつある台風ではこの対称性が崩れていきます。

  • 衛星画像:図2の台風第AA号の白く輝く発達した対流雲域は、中心付近と北〜東側(九州〜四国、中国地方方面)に偏っていて、南〜西側にはほとんどありません。
  • 700hPa鉛直流:図3(下)では、上昇流(網掛け)の極大点は中心付近ではなく北東側(九州北東部〜四国付近)にあり、中心の南西〜北西側は主に網掛けのない下降流域です。乾燥した空気が西側から回り込んでいます。
  • 850hPa気温:図3(下)では、「W」(高温域)が中心付近ではなく東側にあり、中心の西〜北側には「C」(低温域)が見られます。暖気核が崩れて、温帯低気圧のような水平方向の温度傾度をもつ構造になりつつあります。

(4) 500hPaの渦度極大

図3(上)で、九州付近の台風に対応する正渦度域(網掛け)の極大値は+195(単位10−6/s)です。その位置は九州北部付近で、図1の地上の台風中心(北緯31.5°東経130.9°)から見ると100km以上離れた北西側にあります。上空の渦の中心が地上中心より北西にずれている、つまり渦の軸が上空ほど北西に傾いていることも、温帯低気圧化に伴う構造の変化を示しています。

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備考

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