【第65回】実技1・問題2(2026年1月試験)

問題

XX年8月14日から16日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する問題です。紀伊半島の南に接近した台風第XX号と、東北地方北部から日本の東にのびる停滞前線が主役で、予想図の初期時刻はいずれも8月14日21時(12UTC)です。問2では、図5(図4(下)の線分ABに沿った相当温位・風、湿数・鉛直流の鉛直断面図)と図1〜図4を用いて、停滞前線の南側に見られる発達した対流雲域(図2(右)の白い破線内)の成因を考えます。

第65回実技1 図5 相当温位・風の鉛直断面解析図と湿数・鉛直流の鉛直断面解析図(14日21時)

図1〜図4は問1に掲載しています。断面の位置ABは図4(下)、対流雲域は図2(右)の白い破線で示されています。

(1) 前線面の傾き

図5を用いて、800hPaと900hPaにおける停滞前線面の位置を0.5°刻みの緯度で答え、それを基に800hPaと900hPaの間の前線面の傾きを分数値1/Fで求め、分母Fを50刻みの整数で答えます(800hPaと900hPaの高度差は1kmとする)。

(2) 対流雲域の穴埋め

空欄①〜⑧を埋めます(①②④⑤⑥は漢字、③は50刻みの整数、⑦⑧は枠内から選択)。

図1〜図4によると、対流雲域は停滞前線の南側に少し離れた所にあり、850hPaの南風と東南東風のシアーライン付近に位置している。そこは700hPaでは(①)流域かつ湿潤で、850hPaの相当温位はおよそ348K〜351Kである。
図5(上)によると、対流雲域の南端付近より南では1000hPaから上空にかけて成層状態が(②)となっている気層が見られる。この気層の上端は北緯37.5°では(③)hPa付近である。図5(下)によると、上昇流は対流雲域の南端付近より南では中・下層のみだが、北ほどその厚みが増している。このことは、(②)となっている気層が北上しながら持ち上げられたことで(④)が顕在化し、下層のシアーライン付近での風の(⑤)も加わって対流雲が発生・発達したことを示唆している。また、図5(上)によると、対流雲域付近では900hPa付近から上空にかけて鉛直方向の相当温位の勾配が相対的に小さく、相当温位が周囲より(⑥)い。これは(⑦)によって大気が(⑧)したためと考えられる。地上の前線がある北緯40°付近にも900hPa付近から上空にかけて鉛直方向の相当温位の勾配が相対的に小さく、相当温位が周囲より(⑥)い層があるが、その上端の高度は対流雲域付近より低い。

⑦⑧の選択肢:混合/蒸発/対流/沈降/乱流/融解

(3) 鉛直流の特徴

(2)の2つの下線部の気層(対流雲域付近と北緯40°付近)で上端の高度が異なることに関連する、図5(下)の鉛直流に見られる特徴を55字程度で述べます。

答え

答えを見る

(1)

800hPa:北緯42.0°、900hPa:北緯40.5°、F:150

(2)

空欄答え空欄答え
①上昇⑤収束
②対流不安定⑥高
③750⑦対流
④不安定⑧混合

(3)

対流雲域付近は全層で上昇流となっているが、北緯40°付近は700(750)hPa付近から上空で下降流となっている。

解説

解説を見る

(1) 前線面の位置と傾き

図5(上)では、A側(北側)の下層に相当温位の低い空気(321〜330K)があり、その上を南側の高相当温位の空気が覆っています。相当温位線が密集した帯(前線帯)は、地上付近から北へ向かって高度とともに持ち上がっています。前線面は、この密集帯の暖気側(上側・南側)の縁にあたります。

密集帯の暖気側の縁を読むと、800hPaでは北緯42.0°、900hPaでは北緯40.5°です。水平距離は 1.5° × 111km ≒ 167km、高度差は1kmなので、傾きは 1/167 となり、50刻みでは F=150 です。前線面の傾きはおよそ1/100〜1/300程度が一般的で、妥当な値です。

(2) 対流雲域の環境と成因

  • ①:図3(下)の700hPaでは、対流雲域付近は網掛け(負=上昇流域)で、図4(上)の湿数も3℃以下の湿潤域です。
  • ②③:図5(上)の対流雲域より南(B側)では、1000hPa付近に357Kの高相当温位の空気があり、上空ほど相当温位が低くなっています。相当温位が高度とともに減少する層は対流不安定です。北緯37.5°では、相当温位が高度とともに減少する層の上端(相当温位の極小の高さ)がおよそ750hPa付近にあります。
  • ④⑤:対流不安定な気層が全体として持ち上げられて飽和すると、気層は不安定(絶対不安定)になり、対流が起こりやすくなります(対流不安定の顕在化)。そこに850hPaのシアーライン付近での風の収束が加わり、対流雲が発生・発達したと考えられます。図5(下)で上昇流の厚みが北ほど増していることは、南から流入した気層が北上しながら持ち上げられていることを示しています。
  • ⑥⑦⑧:対流雲域付近では、900hPa付近から上空まで相当温位の鉛直勾配が小さく、周囲より相当温位が高くなっています。下層の高相当温位の空気が対流によって上空へ運ばれ、大気が鉛直に混合したためです。

(3) 気層の上端の高さが異なる理由

図5(下)の鉛直流(細実線・破線、塗りつぶし域が負=上昇流)を見ると、対流雲域(北緯38〜39°)付近では下層から上層まで全層で上昇流となっていて、対流による混合が上空まで及んでいます。一方、北緯40°付近では700(750)hPa付近より上空が下降流(白抜き域)となっています。下降流によって対流の発達が上から抑えられるため、相当温位の勾配が小さい(よく混合した)層の上端は、対流雲域付近より低くなっていると考えられます。

おすすめの参考書

実技試験は過去問演習が中心です。解答例と解説がそろった次の2冊が役立ちます。

備考

本記事に掲載している試験問題は、「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て使用しています。
解説は当サイト運営者が独自に作成したものであり、同センターとは一切関係ございません。
なお、本記事の内容に基づいて生じた損害等について、当サイトは責任を負いかねますのでご了承ください。