問題
XX年8月8日から9日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する問題です。8日21時に九州南部に上陸した台風第AA号(中心気圧988hPa)が主役で、関東の東には台風第BB号もあります。台風第AA号は日本海へ進みながら温帯低気圧に変わる見込みです。予想図の初期時刻は、図13の鉛直流を除き、いずれも8月8日21時(12UTC)です。問3では、図5(西日本付近の地形図)、図6〜図9(500hPa、700hPa、850hPa、地上の12・24時間予想図)と図1を用いて、台風の移動、大雨の予想とキキクル、温帯低気圧化に伴う乾燥貫入・前線・強風域の変化を考えます。




図1は問1に、図5は問2に掲載しています。
(1) 台風の移動の予想
図1および図6(右下)、図8(右下)を用いて、8日21時に九州南部にある台風第AA号の24時間後までの移動について、次表の空欄①〜④を答えます。
| 予想期間 | 移動の方向(16方位) | 移動の速さ(5ノット刻み) |
|---|---|---|
| 初期時刻〜12時間後 | (①) | (②)ノット |
| 12時間後〜24時間後 | (③) | (④)ノット |
(2) 大雨の予想
図6(右下)では、九州北部から中国地方、日本海西部にかけて前12時間降水量が50ミリを超え、最大141ミリに達する大雨が予想されています。図5〜7を用いて答えます。
①9日9時の時点で降水強度が最も強いと予測される地域を{九州北部の陸上、中国地方の陸上、対馬海峡、山陰沖}から選びます。
②①の地域で降水強度が最も強いと予測する根拠として適切なものを、次からすべて選びます。
㋐ 500hPaの寒冷渦の影響で大気の状態が不安定となるため。
㋑ 700hPaで強い上昇流となるため。
㋒ 850hPaで風が収束するため。
㋓ 地形の影響を受けるため。
㋔ 台風の中心が位置するため。
③12時間降水量が141ミリに達するような大雨が陸上に予測される場合に監視が重要な3種類のキキクル(警報の危険度分布)について、対象とする災害名と危険度の判定に用いる指数名を答えます。
(3) 温帯低気圧への変化
台風第AA号は24時間後までに日本海で温帯低気圧に変わる見込みです。図6〜9を用いて答えます。
①図9の700hPaで九州の西の海上から関東の東の海上にかけてのびる湿数6℃以上の領域が、700hPa鉛直流と850hPa相当温位の概ねどのような領域に対応しているかを簡潔に答えます。
②この領域が、低気圧に伴う3つの流れ ㋐温暖コンベヤーベルト(WCB)、㋑寒冷コンベヤーベルト(CCB)、㋒乾燥貫入(ドライイントルージョン)のどれに対応するかを答えます。
③24時間後の地上低気圧に伴う地上前線を、解答図(図8(右下)の四角枠内)に前線記号を用いて記入します(前線は枠線までのびているものとする)。
④24時間後の地上低気圧に伴う強風の範囲の12時間後からの変化について、それをもたらした気圧分布の変化にも言及して45字程度で述べます。
答え
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(1)
| 空欄 | 答え | 空欄 | 答え |
|---|---|---|---|
| ① | 北北東 | ③ | 北東 |
| ② | 20(25) | ④ | 15 |
(2)
① 山陰沖
② ㋑、㋒
③(順不同)
| 災害名 | 指数名 |
|---|---|
| 土砂(災害) | 土壌雨量(指数) |
| 浸水(害) | 表面雨量(指数) |
| 洪水(災害) | 流域雨量(指数)、表面雨量(指数) |
(3)
① 700hPa鉛直流:下降流域
850hPa相当温位:相対的な低相当温位域(低相当温位の移流域)
② ㋒
③

④ 閉塞前線の北側で気圧傾度が急になり、地上低気圧の中心の北東側に強風の範囲が広がる。
( )内は別解として認められている値・語句です。
解説
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(1) 予想中心位置をたどる
- ①②:図1の8日21時の中心は北緯31.5°東経130.9°(九州南部)です。図6(右下)の12時間後(9日9時)の中心(L)は中国地方西部の山陰沿岸付近(北緯35.5°東経132.5°付近)にあり、緯度で約4°、経度で約1.5°移動しています。方向は北北東、距離は約450〜470kmで、12時間で割ると約38km/h≒約20ノット、5ノット刻みで20ノット(25ノットも許容)です。
- ③④:図8(右下)の24時間後(9日21時)の中心は日本海西部(隠岐の北東、北緯37.5°東経134°付近)にあり、12時間後の位置から北東へ約300〜330km移動しています。12時間で割ると約26km/h≒約14ノットで、15ノットです。
前半は台風が南からの流れに乗って速く北上し、後半は偏西風帯に入って向きを北東に変えつつ、日本海で速度を落とす予想になっています。
(2) 大雨の根拠とキキクル
- ①:図6(右下)の12時間降水量の極大(141ミリ)は、台風の中心の西〜南西側の山陰沖の海上にあります。
- ②:図6(左下)の700hPa鉛直流では、山陰沖に−209hPa/hの強い上昇流の極値があります(㋑)。また、850hPaの風を見ると、台風の循環に伴う北よりの風と南〜東よりの風がこの付近で収束しています(㋒)。㋐の500hPaの渦度極大は台風自体のもので寒冷渦ではなく、㋓は海上なので地形の影響は受けず、㋔の台風の中心は降水の極大から離れた東側にあるので、いずれも適切ではありません。
- ③:キキクル(警報の危険度分布)は3種類あります。土砂キキクルは土砂災害の危険度を土壌雨量指数(土の中にたまっている雨水の量)で、浸水キキクルは短時間の強雨による浸水害の危険度を表面雨量指数(降った雨が地表面にたまっている量)で、洪水キキクルは河川の洪水災害の危険度を流域雨量指数(上流域に降った雨が河川に集まる量)で判定します(洪水キキクルでは表面雨量指数も組み合わせて用います)。
(3)① ② 湿数6℃以上の領域と乾燥貫入
図9(上)の700hPa湿数の湿数6℃以上の領域(網掛けのない乾燥域)は、九州の西の海上から台風の南側を通って関東の東まで帯状にのびています。図8(左下)の700hPa鉛直流と比べると、この領域はおおむね網掛けのない下降流域に対応しています。また図9(下)の850hPa相当温位では、九州の西から南にかけて相対的に相当温位の低い(330K前後)空気が台風の南側へ流れ込んでおり、相対的な低相当温位域(低相当温位の移流域)に対応しています。
上空の乾燥した低相当温位の空気が下降しながら低気圧の後面から中心の南側に流れ込む流れは乾燥貫入(ドライイントルージョン、㋒)です。衛星画像ではドライスロット(雲のない暗域)として現れ、温帯低気圧の発達期に見られる特徴です。なお、温暖コンベヤーベルトは低気圧の前面(東〜南東側)を南から北上する暖湿な上昇流、寒冷コンベヤーベルトは温暖前線の北側を東から低気圧中心へ向かう下層の流れです。
(3)③ 地上前線の解析
温帯低気圧化しつつある低気圧に前線を解析するときは、850hPaの相当温位の集中帯(前線帯)と、地上の気圧の谷・風のシアーを手がかりにします。
- 図9(下)の850hPa相当温位では、日本海から東北地方にかけて相当温位線が東西に混み合う帯があり、その南縁に沿って温暖前線を描きます。地上では東北地方付近で等圧線が折れ曲がり、風向が変わっています。
- 低気圧の中心の南東側から南西へ、台風の南側に流れ込む低相当温位の空気(乾燥貫入)の東縁に沿って、相当温位の集中帯がのびています。ここに寒冷前線を描きます。
- 低気圧の中心は寒気・乾燥空気に回り込まれているので、中心から温暖前線と寒冷前線の会合点(閉塞点)までを閉塞前線とします。
解答例では、低気圧の中心から北東へ閉塞前線がのび、閉塞点から東へ温暖前線、南〜南西へ弧を描いて寒冷前線がのびています。
(3)④ 強風範囲の変化
図6(右下)(12時間後)と図8(右下)(24時間後)を比べると、24時間後には低気圧の中心の北〜北東側で等圧線の間隔が狭くなり(閉塞前線の北側で気圧傾度が急になる)、矢羽根の風速も大きく、強風の範囲が中心の北東側に広がっています。温帯低気圧化に伴い、中心付近に集中していた強風域が広がるのは、温帯低気圧化した台風でよく見られる特徴です。台風が温帯低気圧に変わったからといって、警戒を緩めてはいけない理由の一つです。
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