問題
XX年6月10日から12日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する問題です。予想図の初期時刻は、いずれも6月10日21時(12UTC)です。東シナ海から日本の南にのびる停滞前線(梅雨前線)上の低気圧と、その後日本の南で発生して発達しながら日本の東へ進む低気圧が扱われ、大気潮汐による気圧変化を考慮して低気圧の盛衰を推定する問題も出題されています。問3では、図6(10日21時の名瀬の状態曲線)、図7(名瀬のウィンドプロファイラによる高層風時系列図)、図8(古仁屋の地上気象要素の時系列図)、図9(850hPa気温・風、700hPa鉛直流の12時間予想図)、図10(500hPa高度・渦度、地上気圧・降水量・風の12時間予想図)と図1を用いて、奄美大島付近の停滞前線の構造と通過、大雨の要因を読み取ります。



(1) 名瀬における前線
①図6でもっとも低い高度にある前線面の高度を10hPa刻みで答え、その理由を15字程度で述べます。②①の前線面より低い高度における湿数の鉛直分布の特徴を40字程度で述べます。③図6を用い①②に着目して、10日21時における名瀬と地上の前線との南北の位置関係を「名瀬は地上の前線の( )側に位置する。」の形で答えます(前線面は等温位面に沿って分布しているものとする)。④図7で、停滞前線面の南側では東成分がみられないものとみなし、停滞前線面を21時からウィンドプロファイラで観測された最下層(300m)に達するまで、解答図に実線で記入します。⑤④で求めた前線面について、最下層に達する1時間前からの時間変化がその後も続くものとして、停滞前線が名瀬の地表面(標高3m)を通過したと推定される時刻を20分刻みで答えます。⑥図7を用いて、10日21時から11日9時にかけての高度300mから4000mにかけての温度移流について、暖気移流の継続時間帯を時間順に答えます。
(2) 古仁屋の地上気象要素
①停滞前線が古仁屋を通過した時刻は3時10分と推定されます。図8において、この時刻に停滞前線が通過したと推定される根拠を30字程度で述べます。②図8の時間内に最も顕著なシアーラインが通過した時刻を10分刻みで答え、その時刻における風向および気温、露点温度の変化の特徴を30字程度で述べます。③図8の時間内における古仁屋の前1時間降水量の最大を0.5mm刻みで、その起時を10分刻みで答えます。
(3) 前12時間降水量の大きな領域の850hPaの特徴
図10(下)では南西諸島付近に前12時間降水量の大きな領域がみられます。図9を用いて、その領域と周辺における850hPaの風向・風速と温度移流の特徴を45字程度で述べます。
答え
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(1)
① 前線面の高度:850hPa(840hPa、860hPa)
理由:気温の安定層の上端であるため。
② 湿数は、前線面から920hPaまでは小さく、それより下層は高度が低いほど大きい。
③ 名瀬は地上の前線の北側に位置する。
④(解答例の図)

⑤ 3時20分(3時40分)
⑥ 10日21時0分〜11日5時40分、11日7時20分〜11日9時0分
(2)
① 露点温度がほぼ最大となり(気温の上昇は一旦止まり)、風向が南東から南に変わったため。
② 時刻:5時30分
特徴:風向が南から南西へ変化し、気温、露点温度の低下が始まった。
③ 降水量:38.5mm 時刻:6時10分
(3)
西南西(南西)の35〜40ノットの強い風が領域の南側から吹いており、暖気移流となっている。
( )内は別解として認められているものです。
解説
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(1)① 前線面の高度
前線面(転移層)は、下層の寒気と上空の暖気の境界にあたり、状態曲線では気温減率が小さい安定層(逆転層や等温層に近い層)として現れます。前線面はその安定層の上端(暖気側の境界)です。図6の気温の曲線を見ると、地上付近から上空へ気温が下がっていく途中、920hPa付近から850hPa付近にかけて気温減率が小さい層があり、850hPaより上では湿潤断熱減率に近い減率に戻っています。したがって、もっとも低い前線面の高度は850hPa(840hPa、860hPaも可)です。
(1)② 前線面より下の湿数
図6で気温(実線)と露点温度(破線)の差(湿数)を見ると、前線面(850hPa)から920hPaまでは両者がほぼ重なって湿数が小さく、920hPaより下では露点温度の線が気温の線から離れ、高度が低いほど湿数が大きくなっています。前線面の上を暖湿気が滑昇して雲ができ、その雲から落ちる雨粒が下層で一部蒸発している状況と考えられます。
(1)③ 名瀬と地上の前線の位置関係
名瀬の上空850hPa付近に前線面があるということは、名瀬は前線面の下の寒気側にいることを意味します。前線面は寒気側(梅雨前線では北側)に向かって高くなるように傾いており、等温位面に沿って分布しているので、前線面が地表に達する地上の前線は名瀬より南にあります。したがって、名瀬は地上の前線の北側に位置します。図1でも、停滞前線は名瀬のすぐ南に解析されています。
(1)④ 停滞前線面の記入
図7では、21時頃の下層(約1.5km以下)では東よりの風が吹き、その上では南西〜西よりの風となっています。問題文の条件により、前線面の南側(上側)では東成分がみられないので、東成分のある風と東成分のない風の境界が前線面です。境界は21時〜0時頃には約1.5kmでほぼ一定ですが、その後しだいに低くなり、3時頃に最下層の300mに達します。この境界を実線で結びます。
前線面が時間とともに低くなっていくのは、地上の前線が南から名瀬に近づいてきている(停滞前線が北上している)ことを示しています。
(1)⑤ 地上の前線の通過時刻
④の前線面は3時頃に300mに達しており、その1時間前(2時頃)は約0.8km付近にあるので、1時間に約0.5km程度低下しています。この割合で低下が続くとすると、300mから地表面(標高3m)まで約300m下がるのに30〜40分程度かかるため、地上の前線が名瀬を通過した時刻は3時20分頃(3時40分も可)と推定されます。この時刻は、南西約30kmの古仁屋を前線が通過した3時10分((2)①)ともよく整合しています。
(1)⑥ 暖気移流の時間帯
温度風の関係から、高度とともに風向が時計回り(順転)に変化する層では暖気移流、反時計回り(逆転)に変化する層では寒気移流となります。図7で高度300m〜4000mの風を見ると、
- 10日21時〜11日5時40分:下層の東〜南東よりの風(前線面通過後は南よりの風)から、上空の南西〜西よりの風へ、高度とともに時計回りに変化しており、暖気移流です。
- 5時40分〜7時20分:シアーラインの通過に伴って下層の風が南西〜西よりに変わり、上空との風向差が小さくなる(あるいは反時計回りの変化がみられる)ため、暖気移流とはいえません。
- 11日7時20分〜9時:再び下層から上空へ時計回りの変化がみられ、暖気移流となっています。
(2)① 古仁屋の停滞前線通過
図8で3時10分頃を見ると、それまで上昇を続けていた露点温度がほぼ最大となり、気温の上昇も一旦止まっています。また、上段の矢羽根から、風向が南東から南に変わっています。停滞前線が北上して通過すると、古仁屋は前線の南側の暖湿な気団に入るため、露点温度が最大となり、風向は前線南側の南よりの風に変わります。これらが通過の根拠です。
(2)② 顕著なシアーラインの通過
図8で最も顕著な変化がみられるのは5時30分で、風向が南から南西へ変化し、それまで25℃前後だった気温と露点温度の低下が始まっています。5時30分以降は平均風速が強まり、10分間降水量も急増して、6時前後に強い雨が降っています。シアーライン付近の収束に伴う強い対流と、雨による冷却を反映した変化です。
(2)③ 前1時間降水量の最大
10分間降水量の棒グラフ(右軸)を連続する6本ずつ合計して、最大となる1時間を探します。強い降水は5時頃から6時10分頃に集中しており、6時10分までの1時間(5時10分〜6時10分)の6本の合計が最大となります。合計は38.5mmで、その起時(1時間の終わりの時刻)は6時10分です。
(3) 南西諸島付近の大雨域と850hPaの風・温度移流
図9で南西諸島付近(図10(下)の前12時間降水量の大きな領域)を見ると、その南側では西南西(南西)の35〜40ノットの強い風(下層ジェット)が吹いています。この風は南側の暖かい領域から等温線を横切って北側へ吹き込んでおり、暖気移流となっています。下層の強い暖湿流が前線帯に流れ込むことで、上昇流と多量の水蒸気が供給され、前線付近で大雨となっていると考えられます。
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