地球の長波放射について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1 つ選べ。
(a) 地球大気中で長波放射は主に二酸化炭素分子と酸素分子によって吸収される。
(b) 地球は全体としてほぼ放射平衡の状態にあり、地球の大気上端から外向きに射出される長波放射量は、地球の大気上端に入射する太陽放射量にほぼ等しい。
(c) 海洋上の背の高い積乱雲の雲頂から放射される単位面積当たりの長波放射量は、その周囲の海面から放射される単位面積当たりの長波放射量よりも大きい。
(a) | (b) | (c) | |
① | 正 | 正 | 正 |
② | 正 | 誤 | 正 |
③ | 正 | 誤 | 誤 |
④ | 誤 | 正 | 誤 |
⑤ | 誤 | 誤 | 誤 |
⑤ a:誤 b:誤 c:誤
「地球大気中で長波放射は主に二酸化炭素分子と酸素分子によって吸収される。」
これは誤です。
「二酸化炭素分子と酸素分子」ではなく、主に水蒸気や二酸化炭素分子によって吸収されています。
長波放射とは、地球から放射される電磁波のことです。長波放射を吸収するものは、温室効果ガスと考えることができます。
温室効果ガスのうち、最も影響が大きいのは水蒸気です。また、酸素分子には温室効果がありません。(参考:二酸化炭素の増加が温暖化をまねく証拠(国立環境研究所 地球環境研究センター))
・水蒸気:約50%
・二酸化炭素:約20%
・その他:約30%

「地球は全体としてほぼ放射平衡の状態にあり、地球の大気上端から外向きに射出される長波放射量は、地球の大気上端に入射する太陽放射量にほぼ等しい。」
これは誤です。
地球の熱収支を見てみると、以下の図の通りです。

・地球の大気上端から外向きに射出される長波放射量 ⇒ 235Wm-2
・地球の大気上端に入射する太陽放射量 ⇒ 342Wm-2
2つの放射量は等しくないため、(b)は誤りとなります。
ちなみに、以下の式は成り立ちます。
外向きに射出される長波放射量(235Wm-2)+反射された太陽放射量(107Wm-2)
=入射する太陽放射量(342Wm-2)
「反射された太陽放射量(=アルベド)」を考慮すると、地球は全体としてほぼ放射平衡の状態になります。
「海洋上の背の高い積乱雲の雲頂から放射される単位面積当たりの長波放射量は、その周囲の海面から放射される単位面積当たりの長波放射量よりも大きい。」
これは誤です。
ステファン・ボルツマンの法則より、放射強度は温度の4乗に比例します。

そのため、温度が高いほど、放射強度は強く(=放射量は多く)なります。
問題文より、「背の高い積乱雲の雲頂」と「海面」の温度を考えてみましょう。
【積乱雲の雲頂】
・高度:高い(約10〜15km)
・温度:低い(約−60℃〜−80℃)
【海面】
・高度:低い(0km)
・温度:高い(約30℃)

積乱雲の雲頂のほうが、温度が低いので、放射量は少なくなります。
よって(c)は誤りです。
放射については以下の記事もご参考ください。