気象庁が発表している解析積雪深・降雪短時間予報について述べた次の⽂(a)〜(d)の下線部の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1 つ選べ。
(a) 解析積雪深は、解析⾬量や数値予報モデルの気温や⽇射量などを積雪変質モデル(約1km 格⼦)に与えて積雪の深さを推定し、その値をアメダスの積雪深計の観測値により補正した上で、約5km 四⽅の平均的な値として作成されている。
(b) 解析積雪深は、雪が⾵に流され移動する効果を考慮していないため、⾵が強い場合は解析の精度が低下する可能性がある。
(c) 降雪短時間予報における1時間降雪量は、降⽔短時間予報の予測値などを⼊⼒値とし積雪変質モデルを⽤いて得られた積雪の深さの1時間毎の増加量を表しており、減少が予測される場合は0 となる。
(d) 降雪短時間予報は、主に地上気温・湿度により⾬雪の判別を⾏っているため、数値予報モデルで地上よりも少し⾼い百m から1000m 程度の⾼度に、地上より暖かい空気が予想されている場合は、予測の精度が低下する可能性がある。
① | (a)のみ誤り |
② | (b)のみ誤り |
③ | (c)のみ誤り |
④ | (d)のみ誤り |
⑤ | すべて正しい |
⑤ すべて正しい
解析積雪深 | 「積雪の深さ」を1時間ごとに約5km四方の細かさで、面的に推定したもの。 |
解析降雪量 | 解析積雪深が1時間ごとに増加した量を算出し、積算したもの。降雪量の実況を表す。 雪が減少した場合、解析降雪量は0になる。 |
気象庁では地域気象観測システム(アメダス)により、全国約330か所で「積雪の深さ」観測しています。
雪の降る地域を中心に積雪深計が設置されていますが、アメダスでは「点」での観測になるため、「面」的に雪をとらえることが難しいです。
解析積雪深・解析降雪量では、積雪計による観測が行われていない地域を含めた積雪・降雪の面的な状況を把握できます。

降雪短時間予報は、6時間先までの積雪の深さと降雪量を、約5㎞四方の細かさで面的に予測したものです。
前述の解析積雪深と解析降雪量は”解析”なので、実際に雪が降ったあとの”実況”を知ることができます。
降雪短時間予報は”予報”なので、「積雪深と降雪量がこれからどうなりそうか」という未来の予測情報を知ることができます。

「解析積雪深は、解析⾬量や数値予報モデルの気温や⽇射量などを積雪変質モデル(約1km 格⼦)に与えて積雪の深さを推定し、その値をアメダスの積雪深計の観測値により補正した上で、約5km 四⽅の平均的な値として作成されている。」
これは正です。
解析積雪深の作成方法は以下の通りです。

解析積雪深は、アメダスの観測結果を使って補正されています。

積雪変質モデルとは、気象条件(気温、日射、降水量など)を入力として、積雪の物理的変化を時間的・空間的に計算するモデルです。
気象庁では、2022年10月より、積雪変質モデルSMAPを使用しています。

なお、解析積雪深を作成する際、積雪変質モデルは1km格子で計算しています。これは、海岸線付近や山岳の地形をより細かく表現することと、入力データの最小格子間隔が1kmであることが理由です。
ただし、積雪変質モデルは雪が風で流される効果などが考慮されておらず、1km格子という細かさで提供するのは適当ではないため、最後に5km平均化されています。
「解析積雪深は、雪が⾵に流され移動する効果を考慮していないため、⾵が強い場合は解析の精度が低下する可能性がある。」
これは正です。
積雪変質モデルは雪の移動(吹きだまり・風による飛散)を考慮していないため、風が強いと、実際の積雪分布と解析値がズレる可能性があります。
たとえば、風下斜面に雪が吹きだまる と、 実際は雪が多いものの解析値では少なくなってしまいます。
反対に、風上側で雪が飛ばされると、実際は雪が少ないものの解析値は多めに出てしまうことがあります。
「降雪短時間予報における1時間降雪量は、降⽔短時間予報の予測値などを⼊⼒値とし積雪変質モデルを⽤いて得られた積雪の深さの1時間毎の増加量を表しており、減少が予測される場合は0 となる。」
これは正です。
降雪短時間予報では、融解・沈降などで減少する場合は0扱い(マイナスは出さない)としています。
ちなみに、「積雪」と「降雪」の違いは以下の通りです。
積雪の深さ (積雪深) | 自然に降り積もって地面をおおっている雪などの固形降水の深さをいいます。 積雪は時間とともに重みで沈んだり、解けたりするので積雪の深さと累積の降雪量には値に差がでます。 |
降雪の深さ (降雪量) | ある時間内に、地表に降り積もった雪などの固形降水の深さをいいます。 気象庁では正時値と1時間前の正時値との差を求め正の値を正時値の降雪量(降雪の深さ)としています。 |

「降雪短時間予報は、主に地上気温・湿度により⾬雪の判別を⾏っているため、数値予報モデルで地上よりも少し⾼い百m から1000m 程度の⾼度に、地上より暖かい空気が予想されている場合は、予測の精度が低下する可能性がある。」
これは正です。
地上よりも高い位置に暖かい空気が流入している場合、実際はみぞれや雨になりやすいため、降雪短時間予報の精度は落ちる傾向にあります。
