地衡風は、等圧線がまっすぐなときに吹く風でした。しかし実際の低気圧や高気圧のまわりでは、等圧線は曲がっていて、風もカーブしながら吹きます。この記事では、カーブして吹く「傾度風」のしくみと、低気圧・高気圧での風の強さのちがいを学びます。
この記事のポイント
- 傾度風は、気圧傾度力・コリオリ力・遠心力の3つがつり合って、曲がった等圧線に沿って吹く風です。
- 遠心力は風速の2乗に比例し、カーブの半径が小さいほど大きくなります。
- 同じ気圧傾度なら、低気圧のまわりでは傾度風<地衡風、高気圧のまわりでは傾度風>地衡風です。
傾度風とは
地衡風は、気圧傾度力とコリオリ力がつり合って、まっすぐな等圧線に平行に吹く風でした。ところが、低気圧や高気圧のまわりの等圧線は、円に近い形をしています。
風が等圧線に沿ってカーブしながら進むと、空気にはカーブの外側へ向かう遠心力(えんしんりょく)がはたらきます。車がカーブを曲がるとき、体が外側へ押される感じがするのと同じです。
摩擦のない上空で、気圧傾度力・コリオリ力・遠心力の3つがつり合い、曲がった等圧線に沿って吹く風を「傾度風(けいどふう)」といいます。地衡風と同じく、傾度風も「力」ではなく「力がつり合って吹く風」です。
3つの力(いずれも空気1kgあたりの力)は、次のとおりです。
- 気圧傾度力:高圧側から低圧側へ、等圧線に直角にはたらきます。大きさは (1/ρ)×(Δp/Δn) です。
- コリオリ力:風の進む向きに直角で、北半球では右向きにはたらきます。大きさは fV(f=2Ωsinφ)です。
- 遠心力:カーブの外側へはたらきます。大きさは V²/r です。
遠心力の大きさ
遠心力 = V² / r
- V:風速(m/s)
- r:カーブの半径(曲率半径、m)
遠心力は風速の2乗に比例します。風速が2倍になると、遠心力は4倍になります。また、半径が小さい(カーブが急な)ほど大きくなります。
低気圧のまわりの傾度風
北半球の低気圧のまわりでは、風は反時計回りに吹きます。このとき、気圧傾度力は中心(低圧側)へ向かう内向きです。コリオリ力は風の右向きなので外向き、遠心力も外向きです。

気圧傾度力 = コリオリ力 + 遠心力
(1/ρ)×(Δp/Δn) = fV + V²/r
- ρ:空気の密度、Δp/Δn:等圧線に直角な向きの気圧の変化の割合(気圧傾度)
- f:コリオリパラメータ、V:風速、r:等圧線のカーブの半径
内向きの気圧傾度力を、外向きの2つの力で支えている形です。遠心力が手伝ってくれるぶん、コリオリ力は気圧傾度力より小さくてすみます。コリオリ力は風速に比例するので、風速は地衡風より小さくなります。
高気圧のまわりの傾度風
北半球の高気圧のまわりでは、風は時計回りに吹きます。気圧傾度力は中心から外へ向かう外向きです。コリオリ力は風の右向きなので内向き(中心向き)、遠心力は外向きです。

コリオリ力 = 気圧傾度力 + 遠心力
fV = (1/ρ)×(Δp/Δn) + V²/r
今度は、内向きのコリオリ力1つで、外向きの2つの力を支えます。コリオリ力は気圧傾度力より大きくなければならず、風速は地衡風より大きくなります。
地衡風との比較
「同じ気圧傾度」とは、等圧線の間隔が同じという意味です。天気図で等圧線の混み方が同じでも、低気圧のまわりの風は地衡風より弱く、高気圧のまわりの風は地衡風より強くなります。

| 力のつり合い | 風速 | |
|---|---|---|
| 低気圧(反時計回り) | 気圧傾度力 = コリオリ力 + 遠心力 | 傾度風 < 地衡風 |
| 直線の等圧線 | 気圧傾度力 = コリオリ力 | 地衡風 |
| 高気圧(時計回り) | コリオリ力 = 気圧傾度力 + 遠心力 | 傾度風 > 地衡風 |
なお、高気圧の中心付近では、気圧傾度があまり大きくなれません。気圧傾度が大きすぎると、3つの力がつり合う風速が存在しなくなるためです。そのため、高気圧の中心付近は等圧線の間隔が広く、風が弱いのがふつうです。
また、竜巻のように半径がとても小さく風が強い渦では、コリオリ力が遠心力に比べて無視できるほど小さくなります。このときは、気圧傾度力と遠心力の2つがつり合って吹く風(旋衡風)と考えます。
まとめ
- 傾度風は、気圧傾度力・コリオリ力・遠心力がつり合って、曲がった等圧線に沿って吹く風です。
- 遠心力は V²/r で、風速の2乗に比例し、カーブの半径が小さいほど大きくなります。
- 低気圧:気圧傾度力=コリオリ力+遠心力となり、傾度風<地衡風です。
- 高気圧:コリオリ力=気圧傾度力+遠心力となり、傾度風>地衡風です。
- 高気圧の中心付近は気圧傾度が大きくなれず、風が弱くなります。
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