【第53回】学科一般・問題6(2020年1月試験)

大気中の降水の形成におけるエーロゾルの働きについて述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。

  1. (a) 水溶性のエーロゾルを核として水蒸気が凝結して形成された微小水滴に対する飽和水蒸気圧は,同じ大きさの純粋な水のみの水滴に対する飽和水蒸気圧よりも高い。

  2. (b) 周囲の大気の相対湿度が高くなると,最初に純粋な水からできた雲粒が形成され,これに水溶性のエーロゾルが取り込まれる。

  3. (c) 過飽和の雲の中では,エーロゾルを核とする凝結過程のみによって1時間程度で降水をもたらす雨粒にまで急速に成長する。

(a)(b)(c)
答え
⑤ 誤 誤 誤

解説 (a)について
「水溶性のエーロゾルを核として水蒸気が凝結して形成された微小水滴に対する飽和水蒸気圧は,同じ大きさの純粋な水のみの水滴に対する飽和水蒸気圧よりも高い。」

これはです。「水溶性のエーロゾルを核として水蒸気が凝結して形成された微小水滴」といった化学物質が溶けた水(溶液)と、純粋な水を比べると、溶液のほうが飽和水蒸気圧は低くなります。


溶液と純粋な水を、それぞれ容器に入れたとします。

水(液体)は蒸発して水蒸気(気体)になると同時に、気体から水(液体)に飛び込む水蒸気分子がいます。

水面から出ていく分子と、水面に入っていく分子の数が同じになったとき、液体の水と気体の水が”平衡状態になった”といいます。あるいは、空気が水蒸気で”飽和した”ともいいます。

溶液が入った容器は、水面に化学物質(ここではエーロゾル)があるため、水分子の出入りを妨げてしまいます。そのため飽和水蒸気圧が低くなります。

【参考】
雨はどのような一生を送るのか(著:三隅良平)
大気エアロゾルが地球環境に与える役割を“化学する”(高橋けんし)
(日本気象学会関西支部第36回夏季大学テキスト)

解説 (b)について
「周囲の大気の相対湿度が高くなると,最初に純粋な水からできた雲粒が形成され,これに水溶性のエーロゾルが取り込まれる。」

これはです。周囲の大気の相対湿度が高くなると、大気中の水蒸気が凝結して雲粒が発生します。このとき、最初に水溶性のエーロゾルを核として雲粒が形成されて、そのあと純粋な水が取り込まれて雲粒が成長します。

エーロゾルが全く存在しない環境では、たとえ周囲の大気の相対湿度が高くなったとしても、水蒸気はなかなか凝結しません。実際の大気では、「エーロゾルが全く存在しない環境」にはならないため、エーロゾルの存在によって凝結が起こります。

【参考】
気象の知識>3.降水過程>過飽和と表面張力

解説 (c)について
「過飽和の雲の中では,エーロゾルを核とする凝結過程のみによって1時間程度で降水をもたらす雨粒にまで急速に成長する。」

これはです。「凝結過程のみ」ではなく「併合過程」も起こることで、雨粒にまで成長します。

凝結過程による水滴の成長速度を計算した例は以下です(図中の赤字は追記)。

雲と雨の気象学(水野量)

雨粒は直径0.1mm以上の水滴です。直径0.1~0.5mmくらいだと霧雨、直径1~8mmくらいが雨です(直径7mmや8mmはかなり大きいため、あまり観測されませんが)。

上記のグラフより、水滴が半径20~30μm(=直径0.04~0.06mm)に成長するまでに、およそ1万秒(2時間46分40秒)もかかることがわかります。

よって、凝結過程のみによって1時間程度で雨粒に成長することはありません。

【参考】
気象の知識>3.降水過程>凝結過程
気象の知識>3.降水過程>併合過程

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