【第53回】2020年1月試験

【第53回】学科一般・問題2(2020年1月試験)

大気中の空気塊の温位と相当温位について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。なお,空気塊の温度,温位,相当温位の単位はKであり,温位及び相当温位の基準気圧は1000hPaである。

  1. (a) 乾燥空気塊の温位は,どのような気圧においてもその空気塊の温度よりも高い。

  2. (b) 湿潤空気塊の温位は,その空気塊の相当温位よりも常に低い。

  3. (c) 乾燥空気塊が断熱的に上昇するとき,その空気塊の温位は高度にかかわらず一定である。

  4. (d) 飽和した空気塊が水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとき,その空気塊の温位は上昇するとともに高くなる。

  (a) (b) (c) (d)
答え
③ 誤 正 正 正
解説 温位と相当温位について
まず温位相当温位について解説します。

温位とは「空気を断熱的に特定気圧(ふつうは1000hPa)の高度まで移動させたときの温度」です。

断熱的とは「外部との熱のやり取りが無い」状態です。

断熱変化には「乾燥断熱変化」と「湿潤断熱変化」があります。

乾燥断熱変化とは「水蒸気の凝結を伴わない変化(=潜熱の放出が無い変化)」のことです。乾燥断熱変化では、高度が1km上がるごとに温度は9.8℃減少します。

湿潤断熱変化とは「水蒸気の凝結を伴う変化(=潜熱の放出を加味する変化)」のことです。湿潤断熱変化では、水蒸気の量によって温度の減少率が変わります。

対流圏下層の場合は約4℃/km、対流圏中層の場合は約6℃/kmで温度が減少します。

例えば高度0mを1000hPaとした場合、「高度0mにある乾燥空気A」と「高度3000m(=3km)にある乾燥空気B」のどちらが暖かいか考えると、以下のようになります。

相当温位とは「温位+潜熱の効果」です。。飽和している湿潤空気を断熱変化させると、水蒸気の凝結が起こります。水蒸気は凝結するときに潜熱を出します。この影響を加味したのが相当温位です。


解説 (a)について
「乾燥空気塊の温位は,どのような気圧においてもその空気塊の温度よりも高い。」

これはです。 下図のような空気塊を考えます。

※考えやすいように簡単な数字にしています。

それぞれの空気塊を見てみると、
・乾燥空気塊A:高度500m、温度10℃、温位10℃
・乾燥空気塊B:高度3000m、温度-15℃、温位14.4℃
・乾燥空気塊C:高度0m、温度12℃、温位7.2℃

乾燥空気塊Aは1000hPaにあるので「温度=温位」です。
乾燥空気塊Bは「温度<温位」です。
乾燥空気塊Cは「温度>温位」です。

よって乾燥空気塊の温位は、その空気塊の温度よりも低くなる場合もあります。

解説 (b)について
「湿潤空気塊の温位は,その空気塊の相当温位よりも常に低い。」

これはです。湿潤空気とは、水蒸気を含む空気のことです。そのため相当温位を求めるとき、必ず潜熱の放出が発生します。

温位と相当温位の関係は、

相当温位 = 温位 + 潜熱の効果
⇔温位 = 相当温位 ー 潜熱の効果

なので、湿潤空気塊の温位は、相当温位より常に低いです。

解説 (c)について
「乾燥空気塊が断熱的に上昇するとき,その空気塊の温位は高度にかかわらず一定である。」

これはです。温位は、空気を乾燥断熱変化させて求める数値です。
そのため、乾燥断熱線に沿って変化させている限り、温位の数値は変わりません。
これを温位の保存といいます。


解説 (d)について
「飽和した空気塊が水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとき,その空気塊の温位は上昇するとともに高くなる。」

これはです。

飽和空気を断熱上昇させると、空気が膨張して気温が下がります。すると、空気が含むことのできる水蒸気量が減るので、水蒸気は凝結して水になります。

水蒸気が水になるとき、潜熱が放出されます。この潜熱の分だけ、空気の温度は上がります。空気を断熱的に変化させているので、温度が上がったときは温位も上がります。


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