【第52回】学科専門・問題4(2019年8月試験)

 以下の式は,数値予報で⽤いられる⽔平⽅向の運動⽅程式である。この式の気象庁のモデルにおける取り扱いについて述べた次の⽂(a)〜(c)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①〜⑤の中から⼀つ選べ。

  1. (a) 総観規模の現象に対しては,コリオリ⼒と気圧傾度⼒がつりあう地衡⾵平衡近似がよい精度で成り⽴つことから,それらの現象を主な予測対象とする全球モデルでは,上式の右辺の第2項と第3項を計算していない

  2. (b) スケールの⼩さい現象ではコリオリ⼒の効果は⼩さいことから,それらの現象を主な予測対象とする局地モデルでは,上式の右辺の第2項を計算していない

  3. (c) 地表⾯付近における乱流の効果などの,格⼦間隔より⼩さいスケールの現象の効果は,上式の右辺の第4項の中で計算されている

(a) (b) (c)
答え
④ 誤 誤 正
解説 数値予報モデルの方程式について
数値予報モデルで用いられる物理法則の基礎方程式と、それぞれの式に関わる力は以下です。(参考:気象庁HP

①運動方程式
・水平方向:移流変化・コリオリ力・気圧傾度力・外力
・鉛直方向:移流変化・コリオリ力・気圧傾度力・外力・重力

※静力学平衡の場合は「気圧傾度力」と「重力」がバランスする。

②質量保存の式:密度の移流変化・収束・発散による密度変化

③熱力学方程式:温度の移流変化・断熱・圧縮による変化・非断熱加熱

④水蒸気の方程式:比湿の移流変化・相変化に伴う加湿

⑤気体の状態方程式:気圧 = 空気密度 × 気体定数 × 温度

⑥その他
大気の乱流エネルギーや地中温度などを考慮することもある。

移流変化・気圧傾度力・収束・発散は「力学過程」と呼びます。

外力・非断熱加熱・相変化に伴う加湿など、大気の流れに関するもの以外の効果や内部的な変化は「物理過程」と呼びます。

物理量の格子平均からのズレの影響も物理過程で考慮します。

解説 (a)について
「(中略)全球モデルでは,上式の右辺の第2項と第3項を計算していない。」

これはです。

全球モデルでは第2項「コリオリ力」と第3項「気圧傾度力」も計算しています。

全球モデルでは地球全部を対象領域として計算するので、総観規模の現象を予測することになります。

この場合、問題文の通り地衡風平衡(コリオリ⼒と気圧傾度⼒がつりあう状態)が近似的に成り立ちます。

あくまで近似的のため完璧に成り立っている訳ではないので、「コリオリ力」と「気圧傾度力」も計算する必要があります。

解説 (b)について
「(中略)局地モデルでは,上式の右辺の第2項を計算していない。」

これはです。

局地モデルでは第2項「コリオリ力」も計算しています。

コリオリ力は地球が自転することが原因で生じる力なので規模が大きそうですが、局地モデルで捉えるようなスケールの小さい現象でもコリオリ力を無視することはできません。

解説 (c)について
「地表⾯付近における乱流の効果などの,格⼦間隔より⼩さいスケールの現象の効果は,上式の右辺の第4項の中で計算されている。」

これはです。

大気の上層とは異なり、地表面付近では乱流によって運動量、熱、水蒸気の鉛直輸送が行われています。

乱流は数値予報モデルの分解能よりもかなり小さいスケールの現象なので、数値モデルの格子平均からのズレとして物理過程で計算されます。

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