地球が黒体放射していると仮定すると、地球から放出される長波放射エネルギーは放射平衡温度の(a)乗に比例する。また、地球のアルベドをAとすると地球が吸収する短波放射エネルギーは(b)に比例する。放射平衡の状態ではこの2つのエネルギーが釣り合っている。これらの関係から、地球のアルベドが0.3から0.35に変化して放射平衡温度がT1からT2に変化したとすると、放射平衡温度T2は(c)xT1となる。
解説:放射について
まず、放射に関連する言葉の定義をおさえておきましょう。
■黒体
入射されたエネルギーをすべて吸収する仮想的な物体。地球や太陽はほぼ黒体とみなされることが多い。
■黒体放射
黒体が電磁波を放射すること。※すべての物体は絶対零度でない限り、何かしらの電磁波を放射している。
■放射強度
放射されるエネルギーがどのくらい強いかを数値で示したもの。
■プランクの法則
黒体から放射される電磁波の波長と放射強度は、その黒体の温度だけで決まっている。これをプランクの法則という。
(新 百万人の天気教室 (白木正親、成山堂書店)、P41)
■ステファン・ボルツマンの法則(シュテファン・ボルツマンの法則)
プランクの法則の図で、すべての波長における放射エネルギーを合算すると、全エネルギーを求めるられる。この全エネルギーと温度の間には、以下の式が成り立つ。これをステファン・ボルツマンの法則という。
この法則は「黒体放射の放射強度Iは温度の4乗に比例する」ということを示しています。
■アルベド・長波放射・短波放射
- アルベド=入射光に対する反射光の割合。(反射光)/(入射光)
- 長波放射=地球放射=地球が放射する電磁波
- 短波放射=太陽放射=太陽が放射する電磁波
地球の放射は、ほとんどが波長の長い赤外線なので「長波放射」と呼ばれます。
太陽の放射は、波長の短いX線や紫外線を含んでいるため「短波放射」と呼ばれます。
解説:(a)について
「地球が黒体放射していると仮定すると、地球から放出される長波放射エネルギーは放射平衡温度の(a)乗に比例する。」
ステファン・ボルツマンの法則より、地球から放出される長波放射エネルギー(Ⅰ)は、黒体(地球)の温度の4乗に比例します。
解説:(b)について
「地球のアルベドをAとすると地球が吸収する短波放射エネルギーは(b)に比例する。」
地球に入射する太陽放射と、地球から出ていく太陽放射の割合がアルベドです。
太陽放射の収支を考えると、以下の図&式が成立します。
よって、地球が吸収する短波放射エネルギーは(1-A)に比例します。
解説:(c)について
「地球のアルベドが0.3から0.35に変化して放射平衡温度がT1からT2に変化したとすると、放射平衡温度T2は(c)xT1となる。」
放射平衡状態では、「地球が放出する長波放射エネルギー」と「地球が吸収する短波放射エネルギー」が釣り合っています。
(a)より、「地球が放出する長波放射エネルギー」は σT4 と表されます。
(b)より、「地球が吸収する短波放射エネルギー」は、地球に入射する短波放射エネルギー ×(1-A)です。
地球に入射する短波放射エネルギーを「S」とした場合、以下の式となります。
σT4 = S(1-A)
①アルベドが0.3のときの放射平衡温度T1に対する式は、次の通りです。
σT14 = S(1-0.3)= 0.7 × S
②アルベドが0.35のときの放射平衡温度T2に対する式は、次の通りです。
σT24 = S(1-0.35)= 0.65 × S
①②より、T1とT2の関係を導くと、以下のようになります。
よって(c)の答えは、(0.65/0.7)1/4です。